春の花は優しい色で香りの良い花が多く、飾っているだけで弾むような気持にしてくれます。今回は春の切り花の代表選手ともいえる8種類の花を紹介したいと思います。
チューリップ
和名:鬱金香(ウッコンコウ)
ユリ科チューリップ属の球根植物です。
和名の由来はウコン(鬱金)のような香りがすることから付けられました。鬱という字は憂鬱などネガティブなイメージを持ちますが、草木が生い茂っているさまを表す意味もあります。
チュリップを選ぶポイント
生けていると茎が曲がっていったり伸びていく花なので、気になるようなら茎の短い花や曲がりにくい品種を選ぶようにしましょう。
クリスマスシリーズは比較的茎が伸びにくく曲がりにくい品種です。パロット咲きは茎の曲がりを楽しむほうがいいと思います。
チューリップを生ける時
生ける前には水切りをして水を替えるたびに伸びた分を切っていきましょう。また茎は柔らかく腐りやすいので浅水で生けてください。曲がったり伸びたりしますので、草丈に対して背が高いかなと思う花器に生けると収まりが良くなります。
気温が20℃を超えると花が大きく開いてきます。裏技として花と茎の境目を針で刺すと成長が止まり、花も開きにくくなるようです。
スイートピー
和名:香豌豆(カオリエンドウ)麝香豌豆(ジャコウエンドウ)
マメ科レンリソウ属の1年または宿根草の植物です。
スイートピーはsweet(スイート:甘い)とpea(ピー:豆)というふたつの言葉がひとつになったもので、文字通り甘い(香りのする)マメ科の植物です。和名に付いている麝香は艶っぽい官能的な香りといわれているムスクです。
スイートピーを選ぶポイント
スイートピーは下から順に咲く花なので、全部が開花している花より先端に蕾がある方が新鮮です。
また水に濡れると傷みやすい花ですので、雨が降っていて持ち帰る途中で濡れそうな時は買わない方がいいと思います。
スイートピーを生ける時
水に浸かっている部分の茎は腐りやすいので浅水で生けましょう。
花は下から順に咲くので下から順に枯れていきます。花弁が透けてきたら傷み始めていますので取り除くようにしてください。花は下方向にそっと引っ張ると取れます。
スイートピーには自然の色の花と染めてある花があります。イエロー、オレンジ、グリーン、ブラウンなどは染めたスイートピーです。染めた花を生けると水に色が出てきますので、色水が気になるようでしたらガラスなど透明の花器には生けないようにしましょう。
一般的に花は茎を斜めにカットしたほうが水を吸い上げやすいのですが、スイートピーは斜めに切ると茎が潰れやすいのでまっすぐに切りましょう。
フリージア
和名:浅黄水仙(アサギスイセン)香雪蘭(コウセツラン)菖蒲水仙(アヤメスイセン)
アヤメ科フリージア属の球根植物です。
和名の浅黄水仙は花の色から、香雪蘭は甘い香りがすることから、菖蒲水仙はアヤメにもスイセンにも似ていることから付けられました。
黄色と白はフリージアの原種です。赤色や紫色は品種改良で作られました。
フリージアを選ぶポイント
フリージアは根元の方から咲いていく花なので、一番大きい花が少し膨らんでいるかな?という花を買うと順に先端まで咲いていくので長く楽しめます。
脇枝の蕾は1~2輪程度は咲きます。
フリージアを生ける時
フリージアは水も揚がりやすく持ちも良い花です。水切りをして浅水で生け、水替えの時に少しずつ切り戻すようにしましょう。咲き終わった花を摘み取っていくと、先端まで咲きやすいので枯れた花は取り除いてください。
背の低い花器に生ける時やアレンジメントに使う場合は、脇枝の所でカットすると分けやすいです。
ラナンキュラス
和名:花金鳳花(ハナキンポウゲ)
キンポウゲ科キンポウゲ(ラナンキュラス)属の球根植物です。
学名をRanunculusといいます。ラテン語でranaは蛙のことを指し、湿地を好むことや葉の形が蛙の足に似ていることから名前が付きました。
原種は半耐寒性多年草に分類されていますが、園芸種は球根性一年草に分類されています。原種は一重で5弁の黄色い花ですが品種改良を重ねた結果、八重咲きはもちろん、もっと花弁の数が多い万重咲きもできています。
葉は全く違いますが花だけ見るとバラに似ています。しかし花弁の枚数はバラの数倍あり、一枚ずつはとても薄いです。
ラナンキュラスを選ぶポイント
花色も豊富で花形もカメリア咲き、ピオニー咲き、フリンジ咲き、カール咲きなど、いろいろな咲き方があり選ぶ楽しみがあります。
あまり固い蕾は咲かないこともありますので、脇枝の蕾が開きそうな感じのものを選ぶと長く楽しめます。
ラナンキュラスを生ける時
水切りをして浅水で生けてください。
ラナンキュラスの茎は中が空洞になっていますので、花が開花していくと花の重みで茎が折れてしまうことがあります。もし折れそうな感じがあれば茎を短くして花器の縁にもたせ掛けるように生けるか、茎の太さに合わせた#18~#22のワイヤーを茎の中に通してください。
マーガレット
和名:木春菊(モクシュンギク)
キク科モクシュンギク属の半耐寒性多年草です。
マーガレットはキク科の特徴である舌状花と管状花(筒状花)で成り立っています。舌状花は白い花弁で管状花(筒状花)は中心の黄色い部分で、どちらも花です。
マーガレットに限らずキク科の植物は沢山の花弁があるように見えますが、そのひとつひとつが独立した花で、それぞれに雄しべも雌しべもある小さな花の集合体です。
マーガレットを選ぶポイント
新しい花で水揚げがきちんとされていたら葉がシャンとしているので、葉に元気がなかったり変色している花はやめましょう。
中心の管状花(筒状花)は丸くなって膨れてきているようなら咲き進んでいるので、なるべく平らで開いていないものを選んでください。
マーガレットを生ける時
店で水揚げをしていますのでお家では水切りで大丈夫なのですが、どうしても元気にならない時は湯あげをしてください。
湯あげをして冷水に浸けてあるときは良いのですが、葉が水に浸かっていると水も腐りやすくなりますので、花瓶などに生ける際には、水に浸かる部分の葉は取り除くようにしましょう。毎日水を替えて切り戻しをすると長持ちします。
アネモネ
和名:牡丹一華(ボタンイチゲ)花一華(ハナイチゲ)紅花翁草(ベニバナオキナグサ)
キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草です。
ギリシャ語でanemosは風、anemoneは風の娘という意味があります。アネモネは早春の風が吹くと咲く花だったので名前が付いたといわれています。
アネモネを選ぶポイント
アネモネは蕾でもすぐに咲きますので、蕾のものを購入してください。
また色がはっきりしていて花が下を向いていないものを選びましょう。
アネモネを生ける時
水切りをして浅水で生け、定期的に切り戻して水を替えます。
アネモネは光と温度に敏感に反応する性質の花なので、朝になると開きますが夜になると閉じます。このように開いたり閉じたりする花のため、一緒に生ける花が例えばバラのように棘がある花だと開いた時に傷をつけてしまう可能性がありますので避けたほうが無難です。
鮮やかな赤や紫の花弁があるように見えますが、これは花弁ではなくガクです。
ストック
和名:紫羅欄花(アラセイトウ)
アブラナ科アラセイトウ属の半耐寒性の一年草植物です。
たいていの植物の和名は意味はわからなくてもそれなりに読めるものですが、ストックの和名の紫(ア)羅(ラ)欄(セイ)花(トウ)は、どうやったらこのように読むのでしょう。
英語でストックは茎のことを意味し、太い茎に花を咲かせることから付いたそうですが、和名はポルトガル語で葉がラシャに似た毛織物(ラセイタ) に似ていることから、「葉ラセイタ」→「アラセイタ」→「アラセイトウ」になったといわれています。
元々は一重咲きでしたが品種改良されて八重咲きができ、現在は八重咲きが主流になっています。
ストックを選ぶポイント
1本の茎に1つの花が咲くスタンダートタイプと、1本の茎から枝分かれして花を咲かせるスプレータイプがあります。
スプレータイプは分けやすいのでアレンジメントにも使いやすいです。生ける場所や仕上がりの大きさに応じて使い分けてください。
ストックを生ける時
水切りで問題ありませんが、水あがりが悪い時は湯あげをしてください。ストックは水が濁りやすい花なので、水替えはこまめに行って切り戻しをしてください。
また葉が付きすぎていると水落ちの原因になるので、適度に葉を取ってから生けましょう。
スナップドラゴン
和名:金魚草(キンギョソウ)
オオバコ科キンギョソウ属の一年草植物です。
和名の金魚草は花の形が金魚が口を開けているように見えることから付けられました。スナップドラゴンも大きな口を開けたドラゴンという意味です。
スナップドラゴンを選ぶポイント
花が密に付いているけれど、先端近くまでは花が咲いていないものを選びましょう。
葉も元気で黄色くなっていない花がいいです。
スナップドラゴンを生ける時
殆どは水切りで問題ありませんが、水あげが悪いようでしたら湯あげを行ってください。
花は下から咲いていきますので、花が終わったら取り除くようにすると先端まで開花してくれます。
スナップドラゴンの花を横向きに生けると、花先が上を向いて曲がって伸びていきます。もし元のように戻したいのでしたら、新聞紙で曲がらないように少しきつめに包み、水切りをして真っ直ぐになるように立ててそのまま3~4時間水に浸けたままにしておくとまっすぐになります。
花を生ける時のポイント
店でその花に合った水揚げをしていますので、殆どの花は家で生ける時は水切りで問題ありません。しかしマーガレットやストックなどのように水が上がりにくい花は湯あげも必要になるかもしれませんので、方法を記しておきます。
水切りについて
水切りはバケツやボウルに水を溜めて、その中に茎を入れてハサミやナイフを使って水中で切る方法です。新しい切り口に空気より先に水を吸わせることができるので花持ちをよくします。
- 水中に茎を入れて花ばさみを使って水中で切ります。
- 10秒くらいそのまま水につけておき、新しい切り口から水を吸わせます。
- 花瓶などに生けます。
湯あげの方法
花ばさみで茎を切り、切り口をお湯につけてからそのあと水につける方法です。お湯は80℃以上の熱湯を用意してください。
- 茎の下部を20cm程度残して花の上まで新聞紙でくるみます。
- 茎を花ばさみで切ります。
- 切り口を熱湯につけて20秒~30秒ほど待ちます。
- その後すぐに冷水が入っているバケツなどに入れます。
- なるべく花がまっすぐ立つようにし、2~3時間そのままにします。
- 水が上がったのを確認したら新聞紙を外して花瓶などに生けます。
浅水と深水
花器に少しの水を入れて花を生けることを「浅水で生ける」といいます。その反対に花器にたっぷりの水を入れて花を生けることを「深水で生ける」といいます。
殆どの花は浅水で生けて問題ありません。深水で生けるのはバラやアジサイなどです。ただ今回紹介した8種類の花のうちでマーガレットやストックやスナップドラゴンを湯あげの後に冷水に入れる時は深水で暫く浸けておきます。水が揚がったら浅水で生けてください。
切り戻し
茎の最下部を1~2cm切ることで断面の鮮度を上げて、水の吸い上げをよくすることを切り戻しといいます。切り戻しをしたタイミングで花器を綺麗に洗って新しい水を入れて、新しい切り口から綺麗な水を吸わせましょう。
可愛らしい春の花、いろいろと飾ってみてください。