お正月の定番8種類の花の水あげ方法。買って帰った後のお手入れ

お正月は松・竹・梅を中心にして、あとは千両や菊などを飾ることが多いと思います。購入した花は花屋さんが仕入れたのち、それぞれの花に合った水揚げの方法で水を吸わせていますので、殆どの場合は家に持ち帰って生ける前には水切りで問題ないはずなのですが、しかしどうしても上手く水が揚がってくれないこともあるかもしれません。

もちろんお正月だけでなく常に花を飾っている人も多いと思いますが、お正月はいつも以上に花を飾るお家が多くなりますので、今回はお正月用としてセットになっている花の水揚げの方法について書いてみたいと思います。

花は定番の松・竹・梅・千両・菊、そして葉牡丹・百合・蘭(デンファレ)の8種類です。

お正月の花の水揚げ方法

水揚げというのは花が長持ちするように施す処理のことです。最初に8種類の花の水揚げの方法を表にしたものをご覧ください。

花の名前 水揚げ方法
必要なし・太い場合は根元割り
金や銀に塗られた竹は必要なし
葉が付いて節のある竹は全ての節の間に水を入れる
根元割り
千両 水切り・湯上げ・根元割り・根元叩き
水折り
葉牡丹 水切り
百合 水切り
水切り・湯上げ

それでは次に水揚げの方法について書いていきます。



水揚げのやり方

水切り

水の中で茎を切る方法です。

さまざまな水揚げの方法がありますが、水切りは一番ポピュラーで基本の水揚げです。殆どの花は水切りで大丈夫です。

水切りする花

方法

準備するもの:水を入れたバケツやボウルなど、花ばさみ

  1. 水中に茎を入れて花ばさみを使って水中で切ります。
  2. 10秒くらいそのまま水につけておき、新しい切り口から水を吸わせます。
  3. 花瓶などに生けます。

水の中で切る理由:新しい切り口に一番最初に空気ではなく水を吸わせるためです。

切れない花ばさみを使うと導管を潰してしまうため花は上手く水を吸えません。花ばさみはよく切れるものを使いましょう。水の深いところで切るのもポイントです。

水折り

水中で茎を折って切り取る方法です。花ばさみを使って切った水切りと同じ水の中で行うのですが、水折りは花ばさみを使わず手で茎を折ります。茎が堅い菊類はこの方法が一番よく水を吸ってくれます。

水折りする花

方法

準備するもの:水を入れたバケツやボウルなど

  1. 水中に茎を入れて両手の親指の爪を茎に当てて一気にポキッと折ります。
  2. もし折れなかったら茎をねじり切ってください。
  3. 10秒くらいそのまま水につけておき、新しい切り口から水を吸わせます。
  4. 花瓶などに生けます。

手で折る理由:折ったりねじ切ったりすることで、茎の切り口がギザギザになるので水を吸う面積が多くなります。

茎の断面がささくれたりするので見栄えが良くありませんが、菊類は水折りをすると一気に水を吸ってくれます。

湯上げ

花ばさみで茎を切り、切り口をお湯につけてからそのあと水につける方法です。

湯上げする花

方法

準備するもの:お湯を入れたバケツなどの容器・冷水を入れたバケツなどの容器・新聞紙・花ばさみ

  1. 茎の下部を20cm程度残して花の上まで新聞紙でくるみます。
  2. 茎を花ばさみで切ります。
  3. 切り口を熱湯につけて20秒~30秒ほど待ちます。
  4. その後すぐに冷水が入っているバケツなどに入れます。
  5. なるべく花がまっすぐ立つようにし、2~3時間そのままにします。
  6. 水が上がったのを確認したら新聞紙を外して花瓶などに生けます。

熱湯につける理由:茎を熱湯につけることで導管内にある空気を外に出すことができ、水がスムーズに上がるようになります。

お湯の温度は80度以上にしましょう。新聞紙を巻くときは花や葉に蒸気が当たらないようにするため、根元の部分をピッチリと止めます。お湯に浸けると切り口からブクブクと泡が出てきますが、その泡は茎の中に入っている空気です。花瓶に生ける時に茎が長い場合は水切りをしてから生けてください。



根元割り

根元に一文字や十文字の切り込みを入れることで水を吸わせる方法です。ハサミで切りにくい枝物によく使います。

根元割りをする花

方法

準備するもの:花ばさみ・枝切りばさみ

  1. 一文字や十文字に根元(茎)を縦に割ります。
  2. 花瓶などに生けます。

根元を割る理由:枝物などの茎が太いものや堅いものは、根元に切り込みを入れ、断面を広げて水を吸いやすくします。

割る時は根元から茎に平行になるように花ばさみを入れますが、割った個所が広がるようにしっかりと割ってください。切り込みが浅かったり傷程度だと水が上手く上がりません。

根元叩き

根元をハンマーや木づちで叩いて断面を広げて水を吸うようにする方法です。堅い茎の場合に使います。

根元叩きをする花

方法

準備するもの:ハンマーや木づち

  1. 根元(茎)をハンマーや木づちで繊維がほぐれるように叩きます。
  2. 花瓶などに生けます。

根元を叩く理由:根元を叩いて繊維をほぐしてあげることで水をよく吸うようになります。

叩くときは力任せに叩かないで、根元(茎)のほぐれ具合を見ながら叩いてください。個人的にはハンマーより木づちの方が茎への当たりが柔らかいように思います。ハンマーも木づちもない時は花ばさみの柄の部分で叩いてください。花ばさみの柄で叩くのは私がよくやっています。

松について

松の水揚げ

お正月の松は「松市」という決まった日に仕入れをします。松市はたいてい毎年12月上旬にあり、仕入れたあとは店できちんと水揚げをして年末まで保管しています。しっかりと水を含ませているのでお家での水揚げは特に必要ありません。

使いたい長さに切ってお使いください。もし剣山に挿す時などで枝が太いようでしたら、一文字、あるいは十文字に切り込みを入れてください。

はなこ
はなこ

12月上旬に仕入れて年末に売るなんて古くなっているんじゃないの?なんて思われるかもしれませんが、松は切り花にしても約3ヶ月持ちます。松以外の花が先に枯れてしまいます。

竹について

お正月用の花のセットにも入っていることが多い、金色や銀色に塗られた竹の水揚げは不要です。同じように金色や銀色に塗られた柳も不要です。

松の水揚げ

水揚げが必要なのは節があり葉が付いている、いわゆる「竹」です。太さも金色や銀色に塗られた細い竹とは全く違い、しっかりと太さもあってお正月用の切り花セットでは販売されることはありません。しかし根強い「竹ファン」の人がいらっしゃって、私自身も毎年のようにお正月直前になるとお客様のお家に竹を持って生け込みに行っていました。

このような竹の場合は花屋で水揚げ処理をしていますが、お家でも引き続いて水を足していただかなくてはいけません。

水を足す方法

竹の節の少し下に穴が開いていて、そこに竹ひごか割り箸かセロテープで蓋をしています。蓋を取り、穴から定期的に水を入れてあげます。水を足した後は蓋をしておいてください。

そうすれば竹はかなり長い期間、綺麗な状態で生けることができます。

金色や銀色に塗られた柳は、ずっと生けていると芽が出て根も出てきます。それを植えたらしっかりした樹木になるかどうかは……試したことがないのでわかりませんが、場所があったら植えてみたいです。



いくつも水揚げの方法がある場合

お正月の花でいえば千両は水切り・湯上げ・根元割り・根元叩きという4種類、蘭は水切り・湯上げという2種類の方法があります。こういった場合は今の花の状態を見て水揚げの方法を選んでもらうのがいいのです。

例えば千両なら、普通にシャンとした状態であれば水切りでOKですが、葉がぐたっとしているようであれば根元を割ったり叩いたりするのがいいと思います。もっとぐったりしているようなら根元を叩いた後に湯上げをしてもらうといいのですが、でもその見極めって難しいですよね。

なので、まず最初は簡単な方法から試してもらって、だめなら次の方法をやっていただくのがいいのではないかと思います。

千両の場合:水切り→根元割りか根元叩き→湯上げの順です。
蘭の場合:水切り→湯上げの順です。

家での水揚げが必要な理由

スーパーなどの生花売り場でよく見かけるのが、例えばカーネーションとガーベラとカスミソウが一つに束ねられていて花用のスリーブに入っている束売りになった花です。

ひとつの花桶に沢山のセットされた花束が入っていると、選ぶ時にひとつ持ち上げると隣接している花束が一緒に持ち上がってしまうことがあります。もしその持ち上がった花束を元に戻さなかったら、上に持ち上がったままで切り口が水に浸かっていないということが起こります。

特にお正月用の花は日常に販売されている量の何倍ものセットされた花束が大きな花桶にぎゅうぎゅうに入っていることも多いため、そのように持ち上がってしまうことが通常より増えます。

切り口は水に浸かっていないと乾いてしまうので、買って持ち帰ってそのまま花瓶に生けると花は枯れやすくなってしまいます。また購入される時は水に浸かっていても、もしかすると一旦持ち上がって誰かが水に浸かるように戻した花束かもしれません。

もちろん持ち帰りのときに生じる切り口の乾燥も理由のひとつです。

このようなことから特に繁忙期にセット売りになった花は水揚げや切り戻しをしてから花瓶に生けるようにしてください。

それと購入しようと花束を持ち上げた時に隣接した花束が一緒に持ち上がってしまったら、花桶の底に切り口が付くように(茎が水に浸かる場所まで)戻してくださいますようにお願いします。

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