リンゴの近くに花を飾っていたところ、いつもより早く花が咲いてしまったり、早く枯れてしまったような気がすると感じたことはありませんか?
これはただの偶然だったのでしょうか?いいえ、それはリンゴの近くに花を飾ったから開花も早く枯れるのも早くなったのです。これにはエチレンガスという物質が関係しています。
エチレンとは
野菜や果物はエチレンという物質の働きによって成熟していきます。
例えば、まだ青いバナナや実が固いアボカドやキウイフルーツを、リンゴと一緒に保管していたら早く熟成するという話を聞いたことはありませんか?これはリンゴが出すエチレンガスによって果実を色付かせたり甘くする働きを利用したものです。
しかし成熟した後もリンゴはエチレンガスを放出し続け、結果的にバナナやキウイフルーツやアボカドは老化していってしまいます。これを一般的に私たちは腐ってしまったという言葉で表します。
このようにエチレンはその放出している果実(植物)だけでなく、周辺にある果物(植物)も熟成させたり傷めてしまう働きがあり、それは果物と果物だけの間だけでなく、果物と花の間でも起こります。これが最初に書いたリンゴの近くに花を飾ったことで、早く花が咲いたり枯れたりしたということです。
このことからエチレンは「成熟ホルモン」「老化ホルモン」とも呼ばれています。ではどんな野菜や果物がエチレンガスをたくさん放出させるのでしょう。
エチレンガスを放出しやすい植物
エチレンガスを放出しやすい野菜や果物は、リンゴ・アンズ・梨・メロン・桃・パパイヤ・アボカドなどがあります。
とても身近な野菜や果物ですね。この中で特にリンゴは非常に多くのエチレンガスを放出します。これらの野菜や果物の近くには花を飾らないようにしましょう。
エチレンガスと花
花の中でもエチレンガスの影響を受けやすい花や、受けにくい花があります。
エチレンガスの影響を受けやすい花
カーネーション・バラ・カスミソウ・スイトピー・デルフィニウム・金魚草・ランなど
エチレンガスの影響を受けにくい花
菊・ガーベラ・フリージア・チューリップなど
これらが影響を受けやすい花や影響を受けにくい花です。しかし影響を受けやすい花でも最近では出荷前に行うSTS処理をすることで、日持ちが良くなっている花も多くあります。

エチレンガスの影響を受けないために
エチレンガスを多く発生する条件は、一説では気温が8℃以上ある場合や、密閉された空間だといわれています。
気温や室温が8℃以下、その上風通しの良い場所なんて普通は寒いですよね。ですから、せめてエチレンガスを発生させやすい果物や野菜の近くには花を飾らないようにする、これが一番良い方法ではないでしょうか。
果物と野菜はエチレンガスを発生させやすいと書いてきましたが、実はタバコやお線香、排気ガスなどの物が燃える時にもエチレンガスを発生させるようです。
仏花によく使われている菊の花はエチレンガスの影響を受けにくい花のひとつです。お仏壇には果物をお供えすることが多いですしお線香もお供えしますが、菊の花がエチレンガスの影響を受けにくい花だとすると理に適ったことかもしれません。
エチレンガスを一番多く発生させるのはリンゴです。このリンゴを冷蔵庫でほかの野菜類と一緒に保存すると野菜類が早く傷む原因になってしまいます。リンゴを冷蔵庫で保存する時はビニール袋などに入れてエチレンガスが漏れないようにしてくださいね。
逆に未熟な野菜や果物は、最初に書いたようにエチレンガスを放出しやすい果物と一緒に保存すると成熟が進んでくれるので上手く利用してみましょう。
フラワーギフトで果物と一緒にお花を贈るというセットがあるのを見かけることがあります。もしそのようなギフトセットを貰う機会がありましたら、受け取ったらなるべく早く別々にすることをお勧めします。
受け取り時に宅配ボックスを使われるご家庭も多いと思いますが、宅配ボックス内は通気性がありませんので、なるべく早めに取り出すようにしてくださいね。