1年の最初に咲いて私たちに春の訪れを知らせてくれるのは梅の花といいますが、梅の花より早い1月から咲き始める花があります。ただ1月になって咲くのではなく、早生種だと12月くらいから咲きますので、1年の最後に咲く花であり、1年の最初に咲く花でもあります。
その花を蝋梅(ロウバイ)といい、梅と付いていることから梅の仲間のような名前をしていますが、この蝋梅、梅の仲間ではありません。
蝋梅について
蝋梅は別名で唐梅や南京梅といいます。この名前からわかるように中国原産で、日本へは江戸時代に渡来しました。
2mから4mほどの落葉低木で、花弁が半透明で蝋を塗ったような質感であることと、陰暦(旧暦)の12月(現在の1月頃)にあたる臘月(ろうげつ)に、梅のような花を咲かせることから蝋梅と付けられました。花期は早生種だと12月頃から、晩生種だと2月頃から開花します。
冬の寒い時期に香りの良い花を咲かせることから、英名では「Winter sweet」といいます。
蝋梅は梅ではない
和名の蝋梅にしても、別名の唐梅や南京梅にしても梅と付いていますので、梅の一種だと思ってしまいますが、蝋梅は梅ではありません。
分かりやすく表にしてみました。
蝋梅と梅の違い
蝋梅 | 梅 | |
---|---|---|
目 | クスノキ目 | バラ目 |
科 | ロウバイ科 | バラ科 |
属 | ロウバイ属 | サクラ属 |
種 | ロウバイ | ウメ |
梅はバラ目>バラ科>サクラ属>ウメですが、蝋梅はクスノキ目>ロウバイ科>ロウバイ属>ロウバイなので、最初の「目」の時点で違っています。
蝋梅の種類
ロウバイ(蝋梅)
開花時期:1~2月頃
- ソシンロウバイより花弁が細い
- 中心が深い赤紫色をしている
ソシンロウバイ(素心蝋梅)
開花時期:1~2月頃
- 花弁は細め
- やや大輪で香りが強い
- 庭木として栽培していることが多い
マンゲツロウバイ(満月蝋梅)
開花時期:12~1月頃
- 花弁は丸みがある
- 中心は赤褐色の縁取りがあり、丸く輪のようになっているのが満月に見える
- ソシンロウバイの実生から選別された早咲きの蝋梅
- 2002年に登録された品種
ほかにも5~6月に開花するナツロウバイ(夏蝋梅)やクロバナロウバイ(黒花蝋梅)があります。
蝋梅の実
蝋梅は花が終わった後に実を付けます。しかし梅のような果肉はありません。
蝋梅の実(偽果)にはアルカロイドのひとつであるカリカンチンという有毒成分が含まれています。落ちた蝋梅の実を家畜が食べて中毒になる事故もあるようです。抑制性神経伝達物質の放出を阻害して痙攣を誘発しますので決して食べないでください。
蝋梅は雪中四友のひとつ
中国において職業画家ではない文人(学問を修め、教養を身につけた人のこと)が、自らの楽しみのために描いた絵のことを文人画といいます。
雪中四友(せっちゅうしゆう)というのは梅、水仙、山茶花、蝋梅の4種類の冬に咲く花のことで、文人画に好まれた画題です。
本格的に華道を習い始めた20代の初めの頃、蝋梅を生けて花弁のなんとも言えない透明感のある美しさに魅了されて以来、この季節になると道を歩いていても蝋梅があると足を止めて見入っています。