物事の根拠や証拠などが全くない、でたらめなことを「根も葉もない」といいます。この言葉は「根」となるべき原因も、「葉」となるべき結果もないということなので、植物では「根がなければ成長して生える葉もない」ということになります。
殆どの植物は「根」があり「茎」が伸び、「葉」が出て「花」が咲き、種類によっては「実」ができます。もし「根も葉もなく」「茎」と「花」だけの植物があると、それはでたらめな植物ということになってしまうのでしょうか。
ということで今回は「根」と「葉」のない、「花だけ」「茎だけ」「花と茎だけ」の植物について書いてみることにしました。
花だけの植物
花だけの植物で知られているのはラフレシアです。
東南アジア島しょ部とマレー半島に分布し、20種類以上の品種があるといわれており、花の大きさも品種により15cmくらいから1mくらいまであります。その中で私たちがラフレシアと呼んでいるのはラフレシア・アルノルディイ(Rafflesia arnoldii)で、ラフレシアの中でも一番大きな花を咲かせる種類です。
ラフレシアは世界最大の花といわれていますが、においも世界で1位2位を争うほどの悪臭です。しかしこのにおいは受粉のためにハエなどの昆虫をおびき寄せるためなので、ラフレシアにとっては必要なものです。しかし全てのラフレシアが悪臭を放つわけではなく、種類によっては臭わないものもあります。
大阪の鶴見緑地にある、咲くやこの花館にはラフレシアの展示がありますが、樹脂の中に封じ込めているので大きさは分かってもにおいは感じません。京都府立植物園にも標本があり、こちらはホルマリン漬けになっていて同じようにおいは感じません。どちらのラフレシアも安心して鑑賞してくださいね。
茎だけの植物
茎だけの植物はマツバラン(松葉蘭)です。
枝分かれする様子を箒に見立ててホウキランとも呼ばれます。
マツバランはマツバラン目マツバラン科マツバラン属マツバラン種で、一目一科一属一種だけの特殊な植物です。マツバラン科にはマツバラン属とイヌナンカクラン属の2属があり、マツバラン属にはマツバランとソウメンシダの2種があり、そのうちのマツバランは日本唯一の種です。
名前にラン(蘭)と付きますが、スズラン(鈴蘭:キジカクシ科スズラン属)、クンシラン(君子蘭:ヒガンバナ科クンシラン属)、ハラン(葉蘭:キジカクシ科ハラン属)などと同じでラン科の植物ではありません。
花と茎だけの植物
花と茎だけの植物はマヤラン(摩耶蘭)です。
ラン科シュンラン属の植物には年末などに多く販売されるシンビジウムも含まれています。
近縁のサガミラン(相模蘭)も同様に茎と花だけの植物です。
日本では道を歩いていて、あるいは山道でラフレシアに出会うことはありませんが、マツバランやマヤランは見かけることがあるかもしれません。しかしこの2種はどちらも絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されています。珍しいからといって採取しないでくださいね。