3月と9月にあるお彼岸の「ぼたもち」と「おはぎ」は花の名前から

3月の春分の日と9月の秋分の日は、春のお彼岸、秋のお彼岸という方が馴染みがある人も多いかもしれません。お墓参りに行こうと思われている方もいらっしゃるでしょう。

今回はお彼岸とそれにまつわる花についてです。

お彼岸の意味

彼岸とはサンスクリット語の「悟りの世界」を意味し、語源はパーラミター「波羅蜜多」の漢訳語である「到彼岸(とうひがん)」に由来しています。

私たちが生きている世界は此岸(しがん)といって迷いや煩悩がある世界だそうです。此岸に対して彼岸は悟りの世界です。その間には大きな川があって手前が此岸であちら側が彼岸になります。彼岸では煩悩もなく穏やかな毎日を送ることができるというのが仏教の教えなのだそうです。

しかし煩悩の世界である此岸から悟りの世界である彼岸に到着するためには修行を行わなければいけません。この修行をする期間がお彼岸です。

お彼岸の期間になると仏様の修行をしていない人も煩悩を無くすために、極楽浄土があるとされている西に沈む太陽に祈りを捧げていました。

このように本来の意味のお彼岸は仏教色が濃いものですが、私たちの生活におけるお彼岸はご先祖様のお墓参りを行うことが一般的です。



お彼岸の期間

春分の日や秋分の日は休日になっていますが、その日を中日(ちゅうにち)といい、中日の前3日と後3日の合計7日間をお彼岸と呼びます。

春分と秋分

春分と秋分は昼と夜の長さがほぼ同じになる日ですが、春分の日や秋分の日は毎年同じ日というわけではなく年によって異なることがあります。

春分の日や秋分の日は太陽が春分点や秋分点を通る瞬間とされています。

私たちは1年を365日(閏年は366日)と思って暮らしていますが、きっちり365日や366日ではなく365日と6時間弱です。6時間弱なので365日を3年、そして閏年で6時間(弱)×4=24時間ということで1日足してなんとか帳尻を合わすようにしていますが、きっちりと6時間ではなく6時間弱なので弱の分を余分に調整していることになっています。

このことから太陽が春分点や秋分点を通る瞬間はいつも同じ時間ではなく24時間の中で散らばっていることになり、毎年春分点や秋分点を通る時間がずれていきますので、年によって春分の日や秋分の日が変わるということが起こります。

しかし大幅に変わるわけではなく

  • 春分の日は3月20日から21日頃
  • 秋分の日は9月22日から24日頃

あたりが春分の日、秋分の日になります。

では今回のお彼岸と花というお話なのですが、その前に美味しいお話を少し。



お彼岸には「ぼたもち」と「おはぎ」

おはぎとぼたもち

お彼岸にお供えするものに「ぼたもち」と「おはぎ」があります。なぜお彼岸に「ぼたもち」や「おはぎ」をお供えするようになったのかという理由に小豆の赤い色には魔除けの効果があると古くから信じられており、邪気を払う食べ物とされていたためといわれています。

「ぼたもち」と「おはぎ」は基本的に同じ食べ物です。ただ餡が少し異なっていて、小豆の収穫期と重なる秋のお彼岸は柔らかな小豆を皮のまま潰してつぶあんにし、収穫から日が経ち年を越してからの春のお彼岸には固くなった小豆の皮を除いてこしあんにします。

つぶあんとこしあんの違いがあるにせよ、同じ食べ物で名前が異なるのには花が関係しています。

春のお彼岸には「ぼたもち」の理由

春のお彼岸のお供えするのはぼたもちと呼び、漢字では牡丹餅と書きます。

牡丹の花

春に大輪で艶やかな花を咲かす牡丹は百花の王といわれています。牡丹の開花時期は一般的には4月~5月にかけてなので、春のお彼岸の頃には少し早いかもしれません。

しかし牡丹は春に咲く種類だけではなく冬牡丹や寒牡丹があります。冬牡丹の開花時期は1月~2月、寒牡丹は11月~1月ですが寒牡丹は春にも咲く二季咲きの牡丹です。

色には牡丹色というのがあって赤紫色や紫系の濃い桃色をしていますが、牡丹の花の色はピンクだけでなく、赤や白、黄色などがあります。

秋のお彼岸には「おはぎ」の理由

秋のお彼岸にお供えするのはおはぎと呼び、漢字では御萩と書きます。

萩の花

萩の花は秋の七草のひとつで、日本各地の山野で普通にどこにでも生えている草です。中秋の名月にススキと一緒に飾ることがあります。

はなこ
はなこ

萩(ハギ)桔梗(キキョウ)葛(クズ)藤袴(フジバカマ)女郎花(オミナエシ)尾花(オバナ)撫子(ナデシコ)が秋の七草です。

萩の開花時期は7月~9月で、9月が見頃になります。

萩にはいろいろな品種がありますが多く見られるのは次のようなものです。

  • ヤマハギ(山萩):日本全土に自生しています。山野で見られるほかに栽培もされています。秋の七草のハギはヤマハギのことです。
  • ミヤギノハギ(宮城野萩):別名でナツハギ(夏萩)というように夏の間から花が咲きます。ヤマハギより茎が長いため垂れ下がるように咲きます。
  • ニシキハギ(錦萩):紅色や白花を咲き分けます。変種に白い花が咲くシラハギ(白萩)があります。
  • 江戸絞り:白花に赤い絞りが入っていて、ほかのハギより早く7月~9月頃に咲きます。

春のお彼岸のぼたもちは牡丹の花のように大きめに、秋のお彼岸のおはぎは萩の花のように小さめに作ることもあるようです。

見た目ではぼたもちが牡丹の花、おはぎが萩の花に似ているとは思えませんが、寺島良安により江戸時代中期に編纂された「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」に「牡丹餅および萩の花は形、色をもってこれを名づく」と説明されているように、「ぼたもち」は牡丹の花に「おはぎ」は萩の花に似せているといわれているので、きっと似ている(似せている)のでしょう。



2023年から2030年までのお彼岸の期間を記しておきます。

春彼岸

彼岸入り 春分の日 彼岸明け
2023年 3/18(土) 3/21(火) 3/24(金)
2024年 3/17(日) 3/20(水) 3/23(土)
2025年 3/17(月) 3/20(木) 3/23(日)
2026年 3/17(火) 3/20(金) 3/23(月)
2027年 3/18(木) 3/21(日) 3/24(水)
2028年 3/17(金) 3/20(月) 3/23(木)
2029年 3/17(土) 3/20(火) 3/23(金)
2030年 3/17(日) 3/20(水) 3/23(土)

秋彼岸

彼岸入り 秋分の日 彼岸明け
2023年 9/20(水) 9/23(土) 9/26(火)
2024年 9/19(木) 9/22(日) 9/25(水)
2025年 9/20(土) 9/23(火) 9/26(金)
2026年 9/20(日) 9/23(水) 9/26(土)
2027年 9/20(月) 9/23(木) 9/26(日)
2028年 9/19(火) 9/22(金) 9/25(月)
2029年 9/20(木) 9/23(日) 9/26(水)
2030年 9/20(金) 9/23(月) 9/26(木)

「お彼岸の期間」のところに秋分の日は9月22日から24日頃と書いていますが、表を見ると24日というのは全く見当たりません。しかし1979年以前は4年に一度9月24日が秋分の日でした。その後1980年から2011年の32年間は9月23日が続いていました。

2012年からは4年に一度、閏年には9月22日が秋分の日で、残りの3年が9月23日という組合せになる期間に入ったようです。この組み合わせは2043年まで続くという予想です。

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