実りの季節、栗はどこを食べている?ぎんなんはどこを食べている?

秋は実りの季節です。果実や木の実、田畑も収穫の最盛期を迎えます。美味しいものもたくさんありますね。

私は大阪府に住んでいますが、大阪の北部に能勢(のせ)というところがあります。能勢は銀寄(ぎんよせ)というブランド栗発祥の地で、この地方の栗を能勢栗と呼びます。また大阪府の木は「いちょう」ということもあり、今回は秋の味覚「栗の実」と「ぎんなんの実」について書いてみようと思います。

スポンサーリンク

栗について

栗はブナ科クリ属になる果実の総称です。世界には多くの品種がありますが、大きく4つに分類されます。

  • 日本栗(和栗):日本で一般的に栽培、販売されている栗です。
  • 中国栗:甘栗(天津甘栗)で知られています。
  • ヨーロッパ栗:マロングラッセなどお菓子に使います。
  • アメリカ栗:童謡「おおきな栗の木の下で」に出てくる栗はアメリカ栗です。

日本で栽培されている栗は40種以上ありますが、その中でも先ほど書いた銀寄は日本栗の中でも粒の大きさ、味、形ともに正統派の和栗といわれ、丹波栗として出荷しています。

中国栗といえば天津甘栗で知られていますが、栗の産地は天津ではなく、河北省にある燕山(えんざん)山脈を挟んだ地域です。収穫された栗が天津港から出荷されたため天津甘栗と呼ばれるそうです。

ヨーロッパ栗の産地といえばイタリアで、イタリアでは一般に栗の事をカスターニャ(castagna)、大粒の栗の事をマローネ(marrone)と使い分けて呼びます。またフランスでは前者の場合はシャテーニュ (châtaigne)、後者はマロン(marron)になります。しかし本来マロンはマロニエの実のことで、古くはその実を使ってマロングラッセを作っていたらしいのですが、栗を使って作るようになってから栗の事もマロンと呼ぶようになったといわれています。

アメリカ栗は果実の品質も良く、木材としても優れていたのですが、1904年に発生したクリ胴枯病(クリどうがれびょう)で壊滅し、現在でも栽培はしているものの殆ど流通していないようです。

日本で栽培されている栗は、ほとんどが日本栗です。

では私たちは栗のどこを食べているのでしょうか。


栗の実とは

私たちは栗の部位を外側から「イガ」「鬼皮(おにかわ)」「渋皮(しぶかわ)」「実」と呼んでいますが、植物としてみると少々違ってきます。

栗の花には雌花と雄花があって5月~6月頃に開花し、その後受精し雌花が実になります。写真は雌花と雄花です。

栗の雌花と雄花

写真のように雌花にはトゲがあります。このトゲはつぼみを包むように変化した葉で苞葉(ほうよう)といい、雌花が受精して栗になった時は全体を包むイガになります。このイガを他の果実で例えると皮に当たります。

栗のイガ

イガの中身は「鬼皮(おにかわ)」「渋皮(しぶかわ)」「実」ですが、植物として考えると鬼皮は果肉、渋皮は種皮、実と呼んでいる部分は種子にあたります。ということなので栗は種子を食べています。

栗の果肉、種皮、種子

ところで先ほどから栗の果実と何度も書いていますが、本当に栗は果実なのでしょうか。もしかするとナッツ類(木の実)かもしれませんし、野菜売り場で売っているので野菜なのかもしれません。

まず野菜ですが、野菜の定義は「苗を植えて1年で収穫する草本植物」なので、栗は野菜売り場にあっても野菜ではありません。

次に果実ですが、果樹は2年以上栽培する草本植物及び木本植物で、果実を食用とするものと決められています。栗は木本植物で果実を食用にしているので果樹(果実)の可能性が高いです。しかし気になるのはナッツ類(木の実)です。

木の実は「種実類(しゅじつるい)」と呼ぶ食品分類上のものを指します。これらの食品は固い殻や皮に覆われた果実や種子の総称でアーモンドやピーナッツ、カシューナッツなどが分類されます。ところが果実(果樹)と木の実の違いについては、はっきりと定められてなくて木の実は果物の一部だと考えられているようなのです。

調べてみた所、農林水産省の資料によりますと栗は「果実」に分類されています。また果実ができる木には常緑果樹と落葉果樹があり、常緑果樹は柑橘類、ビワ、オリーブなどで、落葉果樹はリンゴ、ナシ、モモ、カキ、イチジク、ラズベリー、ブルーベリー、アケビ、ブドウ、キウイなど数が多く、クリも落葉果樹に含まれています。

このことから栗は落葉果樹で種子を食べる果実だといえます。

ぎんなんについて

ぎんなんはイチョウに出来る実です。漢字でぎんなんは銀杏、イチョウも銀杏と書きます。漢字にすると全く同じですね。大阪大学に銀杏会館という場所がありますが、これは「ぎんなんかいかん」ではなく「いちょうかいかん」です。

「ぎんなん」は音読みです。「杏」は「あん」や「きょう」と読みますが「なん」と読むのは直前の「ぎん」の「ん」に影響されて「あん」が「なん」に変化したものです。アンズの実を小さくしたような形で、銀のように真っ白な実をしていることから「銀杏」と呼ぶようになりました。

イチョウについては中国ではイチョウの葉がカモの水掻きに似ていることから、「鴨脚」と書いて「イチャオ」「ヤチャオ」「ヤーチャオ」「ヤーチャウ」のように発音してしていました。それが日本に渡来し言葉が変化して「イチョウ」となったとのことです。

イチョウは一科一属一種の雌雄異株の落葉性大高木で、生きた化石と呼ばれています。

イチョウの起源は2億4500万年前まで遡ります。その頃は複数の種類のイチョウがありました。しかし新生代、氷河期になり絶滅した植物も多く、同じように数あったイチョウ属も絶滅したようですが、中国で生育していた1種類だけが絶滅を免れ、現代まで生き残ったと考えられています。

一科一属一種というのは、その種にもその上の属にもまたその上の科にも、その植物しかないということです。イチョウの場合はイチョウ科イチョウ属イチョウ種になります。もっと上の階級である門や綱や目も含めると「イチョウ植物門イチョウ綱イチョウ目イチョウ科イチョウ属イチョウ種」なので、イチョウの為だけの階級ですね。

イチョウの葉を見ると扇形をしているものと切れ込みが入っているものがあります。「葉に切れ目があるのはズボンを履いている雄木」「葉に切れ目のないのはスカートを履いている雌木」なんていうのを聞いたことがありますが、これはどうも俗説のようです。

若干雌木のほうの葉が大きいというのも聞いたことがありますが、結局はぎんなんをつけたら雌木、つけなかったら雄木ということでしょうか。しかし花の咲く時期なら花で区別がつきます。

イチョウの雌花と雄花

写真のように華やかな花ではないので葉の出ている根元あたりを見てくださいね。


ぎんなんの実とは

ぎんなんは臭い部分が果肉部、そして硬い殻があって中に実があるというイメージですが、植物的に見るとどうでしょうか。

イチョウは雌雄異株で雌木と雄木があり、実がなるのは雌木だけです。イチョウの花の開花時期は4月~5月頃で、開花すると雄木の花粉が風で運ばれて雌木に受粉し、受精した雌木は花後に種子を付け、秋になると熟してぎんなんになります。

イチョウは種子が子房に包まれずにそのまま露出している裸子植物のため、 ぎんなんはあの臭い部分も含めて全体が種子です。詳しくは果肉状のところは外種皮、殻は中種皮、薄い渋皮は内種皮で、私たちが食べているのは胚乳と呼ばれる部分です。

ぎんなんの外種皮

ぎんなんの中種皮、内種皮、胚乳

先ほど栗は果実と書きましたが、ぎんなんは「野菜」「果実」「木の実」のどれに分類されているかといいますと、生物学的には果実というのは「被子植物のその中に種子を含む構造のこと」とされています。イチョウは裸子植物なので「被子植物の」という部分から外れてしまいますし、全てが種子なので果実とは言えません。

ではナッツ類かといいますと、例えばアーモンドはバラ科で被子植物になりますし、ピーナッツはマメ科で被子植物、ということはナッツ類も被子植物ですし、木の実(ナッツ類)は果実の一部だと考えられているということもあり、ぎんなんはナッツ類でもありません。そして「苗を植えて1年で収穫する草本植物」という定義の野菜の可能性は全くありません。

ということで、ぎんなんは種子でしかないということになります。

植物や生物の構造って面白いけど難しいですね。

栗やぎんなんを使った料理は美味しいですが、どちらも食べ過ぎはあまりよくありません。特にぎんなんの食べ過ぎには注意して、秋の味覚をお楽しみくださいね。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました