春になると球根植物が咲き始めます。春に咲かせるためには前年の秋に球根を植えますが、秋に植えて翌年の春に花が咲く球根のことを「秋植え球根」といいます。
秋植え球根は球根を初めて育てる人でも管理がしやすく、花の種類も多いのでおすすめです。
秋植え球根について
秋植え球根は秋に植え付けて冬を越し、春に花を咲かせて夏に掘り上げ、また秋に植えるというサイクルで育てます。
「夏に掘り上げ」と書きましたが、球根の中には植えたままでも良いものもあります。しかし日本の夏の高温多湿や梅雨の長雨などの理由により掘り上げてしまう方が多いかもしれません。もし掘り上げなくていいとしても3年毎くらいには球根整理を兼ねて掘り上げた方がいいでしょう。
あと球根が入っていた袋などに植え付け時期や植え付け時期に適した気温などが書いてあると思いますので、そちらも参考にしてください。
秋植え球根は春に花を咲かせるために2ヵ月以上寒さにあたる期間が必要です。暖かい時期に植えてしまうと病気になったり花が咲かなかったりすることがあります。
ただ植え付けに適した時期よりお店に球根が並び始めるのは早いため、いいなと思う球根は早く売り切れてしまうことがありますので夏を過ぎて植えたい球根が見つかったらその時に買ってしまいましょう。
球根は皮に艶がありずっしりと重さがあって傷がないものを選んでください。
風通しが良く涼しい場所で保管してください。日光が当たったり気温の高い場所で保管すると春になっても花が咲かないかもしれません。また湿度が高く風通しの悪い場所で保管するとカビが生えたり腐ったりすることもありますので、絶対に置かないようにしてください。
秋植え球根を植える時の注意点
植物によっては昨年と同じところに同じ球根を植えると花色に異常が出たり球根が腐ったりする連作障害を起こすものがあります。チューリップやフリージアは連作障害が出やすい植物です。
連作障害を起こさないようにするには地植えは前年に植えた場所と同じところには植えないようにし、鉢植えは用土を変えて植えた方が安心です。
それでは秋植え球根でおススメの8種類を紹介します。
チューリップ
チューリップはユリ科チューリップ属の多年草で、秋植え球根の代表選手ともいえます。
チューリップは開花時期が3つに分かれています。
- 早生(わせ):3月下旬~4月上旬
- 中生(なかて):4月中旬~4月下旬
- 晩生(おくて):4月下旬~5月上旬
開花時期による品種の違い
- 早生:一重早咲き、八重早咲き
- 中生:トライアンフ、ダーウィンハイブリッド
- 晩生:一重遅咲き、八重遅咲き、ユリ咲き、パーロット咲き、フリンジ咲き、レンブラント咲き
開花時期は早生だと3月下旬から、晩生だと5月上旬まで咲きますので、開花時期の異なる品種を混ぜて植えると長く楽しむことができます。
植え付けの時期は早生も中生も晩生も一緒です。
チューリップを植える時の注意点
球根は3~5cm間隔で植え、深さはプランターの場合だと根の張るスペースを確保するため、球根の上の覆土は3~5cm程度にします。地植えの場合は8~10cm程度被るように植えてください。
クロッカス
クロッカスはアヤメ科クロッカス属の総称で、別名で花サフランといいます。チューリップより開花時期は早く、2月頃から花が咲き始め、3月頃が最も見頃になります。クロッカスは春の訪れを知らせてくれる花ですね。
クロッカスに似た花でサフランがあります。サフランといえば高級スパイスとして知られていますが、サフランもクロッカスと同じアヤメ科クロッカス属ですが、春に球根を植えて秋に開花します。
クロッカスとサフランの違いを表にしました。
クロッカス | サフラン | |
---|---|---|
開花時期 | 春 | 秋 |
花色 | 白・黄・紫など | 紫 |
雌しべの違い | 黄色で短い | 赤、オレンジで長い |
別名 | 花サフラン | 薬用サフラン |
クロッカスを植える時の注意点
翌年まで植えたままでもいいですが、2~3年に一度は掘り起こして球根を整理してから秋に植え直しましょう。
ムスカリ
ムスカリはキジカクシ科ムスカリ属の多年草です。草丈が15~20cm程度と低いため、強く主張する花ではないので、例えばチューリップと一緒に植えたとするとチューリップとムスカリのコントラストが綺麗な上に、上の方で咲くチューリップ、下の方で群生するムスカリというように鉢や花壇を花でいっぱいにしてくれます。
一度植えると数年間はそのまま植えっぱなしでも良いという利点もあります。
原種は50~60種あるといわれ、原種を元にした園芸種もたくさんあり、一般的によく見る青紫色のムスカリはアルメニアカム種といいますが、ピンク色をしたピンクサンライズ、白花のボトリオイデス・アルバなどがありますのでメインに使いたい花に合ったムスカリを探してください。また一面を全てムスカリにするとグランドカバーになるので綺麗です。
ムスカリを植える時の注意点
夏前に掘り上げて秋に植える場合は、掘り上げた時に子球が付いていてもそのまま乾燥させて保管し、植え付ける秋に子球を外して植えてください。
植え付ける時の植え穴の深さは球根ひとつ分くらいが目安です。
フリージア
フリージアはアヤメ科フリージア属の多年草で、香りが良く春の切り花としても人気があります。
フリージアは南アフリカに約12種ほどの野生種が分布していますが、オランダでの品種改良により現在では150以上もの園芸品種ができています。
代表的なフリージアの品種
- アラジン:黄色の代表です。
- アンバサダー:白色の代表です。
- ブルーシー:紫系のフリージアです。
ほかにも八重咲きでアプリコット色をしたピーチクィーン、同じく八重咲きで淡いピンク色のハネムーンなど、花色も豊富で咲き方も一重、八重、半八重がありますので気に入ったフリージアを見つけてください。
フリージアを植える時の注意点
植え付ける時の深さは球根の上に3cmほど覆土し、間隔は10~15cm程度で植えましょう。
ラナンキュラス
ラナンキュラスはキンポウゲ科キンポウゲ属の多年草でバラに似たような花を咲かせます。ただバラと違って棘はありませんし、茎も柔らかく花弁も薄く葉も全く別の形をしています。
キンポウゲ属(ラナンキュラス属)の植物は500種以上ありますが、ラナンキュラスの名前で出回っているのはラナンキュラス・アシアティクスを中心に改良した園芸品種です。最近は品種も多くなり、花色や花形も豊富で、香りのよい品種も登場しています。
花が咲き終わったら付け根で剪定すると約2週間ほどで次の花が咲いてきます。これを繰り返すと5月頃まで花を楽しむことができます。
ラナンキュラスを植える時の注意点
植えつけは約15cm間隔に、覆土は鉢植えなら2cm程度、地植えなら3cm程度にします。
球根は小さい乾燥したバナナの房のような形ですので、繋がった方が上、尖った方が下です。
ラナンキュラスは植えっぱなしでも翌年も花が咲くのですが、どちらかといえば鉢植えで雨に当たらないような場所で育てているのなら植えっぱなしでいいと思います。その場合は葉が枯れてしまっても適度に水やりをしてください。
しかし地植えでは雨が続くと球根が腐ってしまうこともありますので、花が終わり葉が枯れてきたら一旦掘り上げて秋に植えるほうが安心です。
アネモネ
アネモネはヨーロッパ南部から地中海沿岸が原産のキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草ですが、十字軍の遠征などによって世界中に広がっていったとされています。
アネモネという名前はギリシャ語で「風」という意味の「anemos」からきています。由来は「アネモネは花の女神フローラの侍女でしたが、フローラの夫で西風の神ゼピュロスがアネモネに恋をしてしまいます。フローラは怒ってアネモネを追放してしまいましたが、ゼピュロスはアネモネを花に変えてそばに置いた」という神話が元になっています。
咲き方は一重、八重、半八重があり、色も赤や青、紫、白、ピンクなどで華やかに見えますが、花弁に見えている部分はガクです。アネモネには花弁は存在していません。
開花時期は2月~5月頃までありますので長く楽しめます。
アネモネを植える時の注意点
アネモネの球根はユニークな形をしており、上下が分かりにくいという話も聞きます。基本的には植え付ける時は尖ったほうを下にするのですが、品種の違いで分かりにくいときは球根を購入した時に書いてある説明書を読んで、上下の確認をしてください。
植えつけは約15cm間隔、深さは鉢植えの場合は2~3cmの覆土を、地植えの場合は5~7cmの覆土にしましょう。
花後は鉢植えなどで軒下に移動できるのであれば植えっぱなしでもいいのですが、地植えの場合は雨が続くことで球根が腐ってしまうことがありますので、掘り上げたほうが良いと思います。
ヒヤシンス
ヒヤシンスはキジカクシ科ヒヤシンス属の多年草で、水栽培でもおなじみの早春の花です。
ヒヤシンスの球根には「園芸用(土に植える用)」と「水栽培用」があります。土に植えるのであれば土に植える用を準備してください。
品種はダッチ系とローマン系に分けられます。
- ダッチ系:オランダで品種改良された系統で大ぶりの花が密集して咲くためボリュームがあり豪華で華やかな印象のヒヤシンスです。
- ローマン系:フランスで品種改良された系統で草丈が低く、小さな花を咲かせます。ひとつの茎につく花はダッチ系のようにボリュームはありませんが、ひとつの球根からいくつもの茎が出て花を咲かせます。
園芸品種として主流なのはダッチ系ヒヤシンスですし、水栽培で使用するのもダッチ系です。
ヒヤシンスを植える時の注意点
鉢植えの場合の植え付けの間隔は約5cm、深さは3cmほど覆土します。地植えの場合で数年植えっぱなしにするのであれば植え付け間隔は10cm程度、深さは5~8cm程度に植え付けます。
鉢植えも地植えも数年に一度は掘り上げて分球させますが、ダッチ系のヒヤシンスはそのままだと分球しにくいためスク―ピングやノッチングを行う必要があります。
- スク―ピングは球根の底にある基部をえぐり取ること
- ノッチングは基部に切れ込みを入れること
方法は葉や茎が枯れてきたら球根を掘り上げて風通しの良い日陰で1ヶ月程度乾燥させます。乾燥したら消毒した園芸用のナイフやカッターナイフを使ってスク―ピングかノッチングを行います。そのあとスクーピングやノッチングをした側を上に向けて風通しの良い日陰で保管します。
うまく行けば秋頃に切り口から子球が出てくると思いますので植え付けてください。
スノードロップ
スノードロップは早春の花の少ない時期に可愛らしい花を咲かせてくれるヒガンバナ科ガランサス属の多年草です。植えっぱなしでも毎年花を咲かせてくれるので手間がかかりません。
どことなくすずらんに似ているようですが、すずらんはキジカクシ科スズラン属なので別の種類になります。もうひとつ似ているのがスノーフレークで、こちらはもっとすずらんに似ていますがヒガンバナ科スノーフレーク属なので、これもすずらんとは別の種類でスノードロップとは似た種類といったところでしょうか。
おススメの秋植え球根の8つめをスノードロップにするかスノーフレークにするか迷いましたが、今回はスノードロップのほうが少し早めの早春に咲くということでこちらにしました。
このふたつの開花時期はスノードロップのほうが若干早めです。
- スノードロップの開花時期:2~3月頃
- スノーフレークの開花時期:3~5月頃
どちらも可愛い花なので、いつ花を楽しみたいかで決めるのもいいかもしれません。
スノードロップを植える時の注意点
スノードロップは球根と球根を離して植えると咲いた時に寂しい感じになりますので、5cm程度の間隔で植えてください。覆土は3~5cm程度にします。
植えっぱなしでも毎年花を咲かせてくれますが、鉢植えの場合だと数年経つと鉢内に球根がいっぱいになってしまうことがありますので、3年くらいで葉が枯れたタイミングに掘り上げて整理して植え直すことをお勧めします。
植え終わった後と咲き終わった後
植えつけた後は水やりをします。ただ植え付ける前に水を含ませたラナンキュラスやアネモネは以下のとおりではありません。また2回目以降の水やりは鉢植えと地植えで変わってきます。
最初の水やり以降の水やり
- 鉢植えの場合:土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るまで水を与えます。
- 地植えの場合:基本的に水やりは不要、雨水だけで問題がありませんが、雨が降らずに乾燥が続いている時は水やりをしてください。
花が終わった後、掘り上げる球根でも植えたままにする球根でも、葉は枯れるまで残しておきます。そうすることで栄養分を取り込み球根が大きくなっていきます。
秋は園芸店やホームセンターなどでも球根がたくさん並びます。春になって花が咲いた時をイメージして球根選びをしてくださいね。