日本における果実の消費量は1位バナナ、2位りんご、3位みかんです。
このバナナ、りんご、みかんは「果実という部分」を食べていると思っていますが、植物的にはどこを食べているのでしょう。
野菜と果物の分け方
曖昧ではあるものの、分類を細分化したひとつに「果実的野菜」というのがあります。これは野菜の中で果物として利用するものを果実的野菜と定義しています。
これを元にバナナ、りんご、みかんは野菜か果実かという事と、どこを食べているのか書いてみます。
バナナ
バナナはバショウ科バショウ属のうち、果実を食用とする品種群の総称です。品種は多く、甘みの強い生食用の品種とでんぷん質が多く甘みが少ない料理用の品種に分けられます。
収穫できるのは1回のみで収穫後は伐採してしまいます。そうすると株の脇から子株が出てきますので、それを育てるとまた1回だけ収穫できるようになります。
高さ10m近くにまで生育することからバナナはバナナの木と呼ばれていますが、木の幹のように見えているのは何枚も重なった葉で「偽茎(ぎけい)」や「仮葉(かよう)」といいます。
バナナのどこを食べている?
果皮というのは種子を包む部分のことで、めしべの子房の壁が変化してできたものです。
原種のバナナには種がありますが、私たちが食べるバナナには種は見つかりません。種のない植物は3倍体のため染色体の細胞分裂が不規則なので種ができにくいのですが、バナナは受精の必要がない単為結果性なので開花すると受精するしないに関わらず子房が肥大して果実ができていきます。
種がないとはいえ種の名残はあります。バナナを切ると真ん中が筋のようになっていてくぼみがあると思います。バナナによっては小さな黒い粒があり、この部分が種の名残です。
バナナを剥くと筋がありますが、これは根から吸い上げた水分や養分を運ぶ道のようなもので維管束といいます。この維管束にはカリウムや抗酸化成分が豊富にありますので、捨てる人も多いですが本当は食べた方がいいようです。
またバナナは数本が繋がった状態で販売されていることが多いですが、繋がっていない側の先は黒くなっています。この部分は花の名残です。
では次に果皮じゃない部分を食べている果実についてです。
りんご
りんごは植物学上ではセイヨウリンゴといい、バラ科リンゴ属の樹木にできる果実です。現在日本で栽培されているりんごはほぼセイヨウリンゴで、幕末以降にアメリカから入ってきました。
セイヨウリンゴに対して日本で平安時代から栽培されてきた和りんごがあります。和りんごはセイヨウリンゴに比べて果実が小さく、今ではわずかな農家が栽培しているのみで希少な果実といえます。
りんごのどこを食べている?
りんごはどこを食べているかの前に少しだけ果実になる部分はどこかというお話をしたいと思います。
果実は受精後に子房のみが成長してできるものと、子房以外の部分が成長してできるものがあり、できた果実はそれぞれ真果、偽果といいます。
真果と偽果の違い
真果 | 受精後に種子の形成と合わせて子房のみが成熟・肥大し、その中に種子が含まれている果実 |
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偽果 | 花やガク、総苞など、子房以外の部分が生長・肥大して果実の主要部分になったもの |
しかしりんごにも果実(真果)があります。真果の定義は「受精後に種子の形成と合わせて子房のみが成熟・肥大し、その中に種子が含まれている果実」ということから、私たちが芯と呼んで捨ててしまうところがりんごの本当の果実です。
りんごのおしりの方にギザギザとしたものがありますが、これはガクの名残です。また半分に切った時にガクの内側に見える尖ったようなものは雄しべの名残です。
では次に真果を食べている果物について書いてみましょう。
みかん
この温州みかんという名前は、柑橘の産地である中国浙江省の温州市にあやかって江戸時代の後半に付けられました。しかし温州みかんの発祥は日本の薩摩地方(鹿児島県)の長島だと考えられていて、中国の温州市から伝来したわけではないようです。
アメリカをはじめ諸外国では「Satsuma Mandarin(サツマ マンダリン)」と呼ばれています。
みかんのどこを食べている?
みかんは子房が成長したものなので真果です、そして外果皮・中果皮・内果皮から成り立っています。一番外側の剥く皮は外果皮、白い綿のような部分は中果皮、そして薄い皮の部分が内果皮になり、この薄い皮の袋の名前をじょうのうといい、じょうのうの中身を砂じょうといいます。
白い筋は取り去る人も多いですが、食物繊維とヘスペリジンを豊富に含む維管束なので本当は捨てないほうがいいようです。
外果皮の表面にある小さな点々は油胞といい、これは精油中に含まれる成分のひとつ「リモネン」が含まれていて香りを発生させるほか、油汚れなどの洗剤としても利用されています。
今回は消費量の多い3種類の果実について書いてみましたが、ほかにも果実はたくさんありますので調べてみると植物の面白さを感じていただけることでしょう。私もまたの機会に書いてみようと思います。