春になると食卓を彩る豆ごはん。美味しいですね。
「スナップえんどう」や「きぬさや」はさやごと食べますが、豆ごはんにする時はさやから豆を取り出して使います。これは別のえんどうなのでしょうか?
えんどうについて
えんどうはマメ科エンドウ属の1年草の植物です。古代オリエント地方や地中海地方で栽培化された豆で、日本に伝わったのは7~8世紀頃、栽培が始まったのは江戸時代になってからです。
えんどう豆は成熟するまでのそれぞれの過程を食べることができる植物です。若いさやを収穫してさやごと食べるものを「さやえんどう」といい、成熟して実だけを食べるものを「実えんどう」といいます。
さやえんどう
実えんどう
スナップえんどう
スーパーなどで販売されているのを見るとスナップえんどうと書いてあったりスナックえんどうと書いてあったりするようですが、正式には「スナップ」(snap:ポキッと音を立てて折れる)えんどうです。
スナックえんどうという名前はサカタのタネさんがスナップえんどうの種苗を販売する時に「スナックえんどう」と名前を付けて売ったことに由来しています。
スナップえんどうとスナックえんどうは同じものです。
えんどうはさやの硬さにより、軟莢種(なんきょうしゅ)と硬莢種(こうきょうしゅ)に分けられます。軟莢種はさやが柔らかいのが特徴でさやえんどう、スナップえんどうなどです。
硬莢種はさやが固く完熟して乾燥した豆を収穫して加工します。硬莢種には赤えんどう、青えんどうという種類があります。
赤えんどう
青えんどう
紫えんどうはツタンカーメンえんどうともいい、古代エジプトのツタンカーメン王のお墓から出土した豆の子孫といわれています。1992年にお墓を発掘した時に多くの副葬品の中から見つかり、それを持ち帰って栽培に成功し「ツタンカーメンのエンドウ豆」として各地に広めたとされていますが、調べるとどうも眉唾では?ということも…。そもそもそんな古い豆から発芽するのかとも思いますし、真偽のほどはわかりません。
ツタンカーメンえんどうは濃い紫色のさやの中に緑色の豆が入っています。緑色の豆をお米と一緒に炊くと不思議ですが赤飯のような色になります。炊きあがってすぐよりしばらく保温状態にしておくと色が綺麗に出るようです。
えんどうの花
えんどうの花はスイートピーに似ています。
それもそのはず、スイートピーはマメ科の植物です。和名ではジャコウエンドウ(麝香豌豆)やカオリエンドウ(香豌豆)、ジャコウレンリソウ(麝香連理草)と呼ばれています。ただスイートピーは有毒なので食用にはできません。
ところで春になると公園や空地などの私たちの身近なところで見かける小さなえんどうの花があります。カラスノエンドウです。
カラスノエンドウはえんどう豆?
正式な名前はカラスノエンドウではなくヤハズエンドウといいます。でもカラスノエンドウの方がわかりやすいですね。
カラスノエンドウは「カラス(鳥の名前)」「ノ(~~の)」「エンドウ(豌豆)」ではなく、「カラス(鳥の名前)」「ノエンドウ(野の豌豆)」という意味で、ノエンドウのひとつの種類です。
ノエンドウにはカラスノエンドウのほかにカスマグサ、スズメノエンドウという種類があり、花はカラスノエンドウが一番大きく…といっても10~15mm程度、スズメノエンドウは3~4mm程度しかありません。カスマグサはちょうど中間くらいの大きさです。
さやの中に入っている豆の数もカラスノエンドウは8~10粒程度ですが、カスマグサは4粒、スズメノエンドウは2粒程度です。
「カ」ラスノエンドウと「ス」ズメノエンドウの間の大きさということで、「カ」と「ス」の間という意味で付けられました。
カラスノエンドウは花も葉もさやも実も食べることができます。今や雑草扱いされていますが元々はえんどうと同様に食用として栽培されていました。カスマグサもスズメノエンドウも食べることができますが、カスマグサは少し筋が気になるようです。
えんどうの栄養
えんどう豆にはビタミンB1、ビタミンB2、カリウム、食物繊維、タンパク質などを含んでいます。
- ビタミンB1:エネルギーの代謝を助ける
- ビタミンB2:皮膚や粘膜、髪、爪などの細胞の再生を助ける
- カリウム:細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つ
- 食物繊維は整腸効果や血糖値上昇の抑制する
- タンパク質:筋肉や内臓、髪、爪などを構成し、ホルモンや酵素、免疫細胞を作る
さやえんどうにはビタミンC、豆苗にはβ-カロテンが豊富に含まれています。
- ビタミンC:抗酸化作用や免疫力の向上などの効能
- β-カロテン:健康な皮膚や粘膜を作ったり老化を防止する効果
手軽に使えるのは缶詰や冷凍のものですが、春から初夏にかけては旬を迎える新鮮なえんどう豆をお召し上がりくださいね。
豆苗とえんどう
名前に豆が付くものとして豆苗がありますが、これはえんどうの若菜です。
豆苗は使い勝手も良く、そして私だけでなくおそらく皆さんも同じようにされていると思いますが、1度カットしても豆と根を水につけておくともう一度収穫できる経済的な食材です。
以前この豆苗を水栽培ではなく土に植えてみたことがありますが、土に根を下ろし普通に花が咲いてさやえんどうが収穫できました。植え付ける時は絡んでいる根をほぐしてから植えるようにしましょう。植え付けの時期は10月から11月頃に植えて越冬させるか、2月下旬から3月頃に植えるのがいいようです。
豆苗を土で育てると豆苗とえんどうは同じものだとわかりますし、成長していく過程も見ることができます。もちろん収穫して食べることもできますので興味を持たれたらお試しください。
追記:自宅で土に豆苗を植えてみたら
スーパーで豆苗を買いました。料理に使ったあと土に植えても良さそうな季節だったため、水栽培ではなくプランターで育てることにしましたのでその記録を書いてみます。
2021年2月20日
食べた後の豆苗を自宅にあったプランターに植えました。
豆苗のパック全量を植えることも考えましたが、持ち合わせているプランターがそこまで大きいものではなかったので半分に切って育てることにします。
2021年3月20日
植えてからちょうど1か月目の写真ですが、なんだか好き放題に伸びてきています。この写真を撮ったあとネットをかけて巻きひげが絡まるようにしました。
2021年4月25日
草丈が私の肩を越したあたりから可愛いピンク色の花が咲きはじめました。花が咲いたということは実を付けるまでもうすぐです。
2021年5月3日
花が咲いたあと実ができてきました。まだまだ小さな実ですがちゃんとしたさやえんどうです。花もたくさんついているので収穫も楽しみです。
2021年5月11日
スーパーで販売されているものよりは小さいですがさやえんどうを収穫しました!収穫したその日の夕食に野菜の炊き合わせを作ったので彩りとして使いました。
あと何度かは食卓にのぼると思います。
オマケのお話
さやえんどうを収穫した夜に、岡山県に住んでいる友人とLINEをしました。端折って書くと下のような話です。
岡山ではグリンピースと言わずアラスカって言うよ。
大阪ではうすいえんどうって言うよ。
品種の違いかな?調べてみよう!
彼女は勉強熱心な人なのであれこれ調べてくれています。私もこちらで調べてみました。
すると…
こんなん見つけたけど。
私がネットで見つけたのは「実えんどう豆 うすいエンドウ豆(アラスカ)」と書いてあるサイトでした。
私たちは同じものを言っているのではないかな?
ええっ!同じもの?
そのあともあれやこれやと調べてはああでもないこうでもないと何度もメッセージを送りあい、その夜は不明のままLINEを終了しました。
翌日は彼女から地元の中学校の給食だよりにアラスカについてのことが書いてあったと連絡があり、2日目のえんどう談義に入りました。その間私自身もどこかでアラスカというエンドウの名前を見たことがあると記憶をたどりやっと見つけました。
野菜の種を販売しているネットショップさんで下の3種類の種があったのです。
- グリーンピース
- うすいえんどう
- アラスカえんどう
やはり別のものだったのですね。早速彼女に連絡して別の品種であるということがやっと自分たちの中で納得できました。
そして最後に
ところでえんどうを入れて炊いたご飯はそちらでは何と言うの?
うちの家は香川の文化が入ってるから豆ご飯って言うよ。でも地元の人はアラスカご飯っていうみたい。
アラスカご飯は初めて聞いたわ。こっちも豆ご飯と言うかな。
最後はこのようなご飯の話で、「アラスカえんどう」と「うすいえんどう」の話は終わったというオマケのお話です。
…っと、ここでえんどうの話は終わったかと思いきや3日目です。
今、スーパーに行ってきたらタイムリー且つサプライズな光景が!
というメッセージと共に写真が送られてきました。1枚目の写真は小分けされて袋に入った山積みのアラスカ豆の中央にプライスカードが立っていて、そこにはちゃんとアラスカ豆と書いてあります。
2枚目の写真は小分けされたうちのひとつの袋のアップが写っており、価格のシールが貼ってありアラスカ豆と書かれて…いません。
写真をじっと見ると、え?アステカ豆?!アステカ??!
友人は新品種かと思ってすぐにスマホで調べたそうです。
今度は南米かどこかからの新品種かと思ったけど、どうも野菜売り場の間違いだろうということで。ふはは♪
えんどうってメソポタミアが原産でツタンカーメンえんどうってのもあるくらいだし、アステカえんどうがメキシコあたりで栄えたアステカ帝国が原産だったら面白かったかもしれませんが、残念ながらそれはないようです。
昨日の豆ご飯の話では大阪府民としてオチがないので寂しいなと思っていましたが、最後は岡山県民が良いネタを提供してくれました。