2024年からお札が変わります。1万円札は渋沢栄一さんということなので2021年の大河ドラマ「青天を衝け」も最初から最後までしっかりと観ました。
大阪に住んでいますと、あの時代の実業家といえば五代友厚さんが一番に浮かんでしまうため、渋沢栄一さんは「あさが来た」に登場した銀行の神様のイメージしかなく、青天を衝けで渋沢栄一さんの功績はこんなに沢山あるのかと驚きました。
ところでドラマの序盤、渋沢家では米、麦、野菜、養蚕のほかに藍を栽培して藍玉を作っていました。この藍玉で染めた藍色は海外からも「ジャパンブルー」と称され、日本を代表する色になっています。
蓼食う虫も好き好き
藍玉の話から始まったのに蓼食う虫って話が違っているように思いますが、少しお付き合いください。蓼食う虫も好き好きというのは、人の好みはその人ごとにさまざまであることの例えで、十人十色と同じ意味です。
北海道から南西諸島の水辺などに広く生息し、草丈は30cm~80cmくらいで蕾はピンク色をしていて夏になると白い小さな花を咲かせます。葉が柳のように細いことから柳蓼と名前がつき、別名で本蓼(ホンタデ)や真蓼(マタデ)ともいいます。
この柳蓼は茎や葉にタデオナールという辛みがあるため、辛みが好きな蓼虫(タデムシ)という昆虫が好んで食べます。このことから蓼食う虫も好き好きという言葉ができたようですが、実は蓼虫以外も蓼を食べています。
蓼虫はハムシ科のホタルハムシなどの甲虫です。
鮎の塩焼きにつけて食べる蓼酢(たです)ってご存じだと思いますが、これは柳蓼の葉をすりつぶして酢でのばしたものです。蓼酢以外にもお刺身のツマとして食べている紅蓼は柳蓼の子葉です。このように蓼虫以外では私たち人間が食べています。
蓼藍について
蓼藍は日本では古くから藍染めなどに使われてきました。
蓼藍は本州の東北南部以西の太平洋側と四国、九州の低山帯や平野部に分布しています。花や葉は柳蓼より大きく、藍染め以外では薬用や食用としても用いられています。
近年の研究によりますと活性酸素を消す抗酸化物質であるポリフェノールや、抗菌物質のトリプタンスリンが含まれていることがわかりました。またポリフェノールの中でもケルセチンやケンペロールを多く含んでいるようです。
蓼藍の花がピンク色をしているのでこの色が藍になるように思いますが、藍の色は葉から作られます。柳藍は葉を潰しても緑色のままで変化しませんが、蓼藍の葉を潰して暫くすると青っぽくなります。
藍は最古の染料といわれ世界各地で使われており、約1500年前に中国から日本に伝わってきました。
平安時代までは宮廷や貴族が身に着ける高貴な色だったのですが、鎌倉時代になると武士が鎧の下に藍の中でも一番色の濃い「褐色(かちいろ)」を身に着けるようになりました。これは藍には消炎や解毒や止血の作用があることと、「褐色」が「勝色」というように縁起の良い色とされていたことが理由です。
庶民の間で藍色の着物や暖簾などが使われるようになったのは江戸時代になってからだそうです。
藍染めとインディゴ
インディゴといえば一番に思い出すのがジーンズです。
西洋では藍染めといえば主にインドから輸入されたインド藍を原料にしたインディゴでした。蓼藍はタデ科ですがインド藍はマメ科コマツナギ属の植物です。
しかしインディゴは水に溶けないので染物屋は苦労していたようです。19世紀になるとドイツの化学者がインディゴの化学的な合成に成功し工業生産されるようになりました。現在では殆どのジーンズは合成インディゴで染色されていますが、日本古来の藍染めのジーンズを作っていらっしゃるところもあります。
私の知っている藍染めのジーンズは阿波正藍ジーンズです。糸染めの段階から職人さんによる手染めの為、生産数に限りのある希少なジーンズです。
ほかにも沖縄の琉球藍というものもあり、こちらはキツネノマゴ科イセハナビ属の植物です。
蓼藍から作る藍染めは藍の葉を乾燥・発酵させたものを使って染めますが、琉球藍は石灰を加えて藍の成分を沈殿させてできた泥藍を使って染めるのだそうです。
このように藍色に染める植物って身近なところでもいくつかありますが、世界ではタデ科、マメ科、キツネノマゴ科、アブラナ科の植物など100種類以上あります。
解熱や解毒、抗炎症薬等の薬用植物として重宝されてきた藍の葉。藍染め体験のできるところもあるようなので一度行ってみたいと思っています。