機能性に優れたスリット鉢の実力とメリット・デメリットについて

植木鉢売り場に行くとおしゃれな鉢やナチュラル感のある鉢に混じって、鉢の側面の下部にスリットの入った緑色のプラスチックの鉢も並んでいます。

名前をスリット鉢といい、デザイン性はないように感じますが、実はなかなかの優れものの鉢です。

スリット鉢について

写真は私が持っているスリット鉢ですが、パッと見ただけではなにが良いのかわからないし、下部の隙間から土が漏れるのではないだろうかってことも心配になります。ではこの鉢に植えるメリットってなんなのでしょうか。

スリット鉢

植物と鉢の関係

根は花や葉よりも植物の健康状態がよくわかる部分です。植物が花を咲かせたり実を付けるためには良い根を育てなくてはいけません。

根には植物の体を支えるための役割と養分や水分を吸収する役割があり、養分や水分を吸収する根は鉢と土の間に伸びて行きます。体を支える根は下へ伸びて行き、行き場がなくなると根が回り始めて根鉢(根と土がひとかたまりになったもの)を覆ってしまい、養分や水分を効率よく吸収することができなくなります。

地植えでは根はどんどん伸びていってくれますが、鉢植えの場合は鉢の中という限られた空間でしか根は伸びることができません。もちろんきちんと育てていれば根は張っていきますが、それ以上に効率よく根が伸びて行くことができれば植物はもっと健やかに育ってくれます。

はなこ
はなこ

根のことを考えて作られたのがスリット鉢です。

スリット鉢のメリット

サークリングしにくい

スリット鉢の一番の特徴である下部にあるスリットは鉢内に光を取り入れてくれる役目をしてくれます。鉢内に光が入ることで根が光を感じて根の成長が止まりサークリングしにくくなります。サークリングしないとわき根が出やすくなり養分を吸収する根が充実します。

サークリングとは根が鉢の中で鉢の壁面に沿って伸びていき、ぐるぐると鉢の中を回ってしまう現象のことです。

スリット鉢の内側の写真です。

スリット鉢内側

内側は八角形で面に溝が付いています。このような形状になっていることで根が伸びる時には面に沿って伸びていきやすくなります。またスリットとスリットの間に小さな仕切りのようなものがありますが、この小さな仕切りのおかげで根が回りにくくなります。

次はスリット鉢の裏側の写真です。

スリット鉢裏側

鉢の底は緩やかなカーブになっています。これによって外気温を根に伝えにくくなったり、鉢の中に空気の層ができて根が下に回らなくなります。

酸素と排水

一般的な鉢は鉢底の中央に丸い穴が開いています。水やりをするとその穴から排水されますが、開いている穴が中央だけだと水やりのあと全部が排水されるかどうかはわかりません。

しかしスリット鉢は側面が開いているので排水しやすくなります。

水やりには水を与える以外にも土の中の酸素を入れ替える働きもあります。水はけが良いということは酸素の取り入れもスムーズにできるということに繋がります。ほかにも根がグルグルと巻き付いていることもなく素直な状態になっているため、植え替える際の根に与えるダメージを減らすこともできますし、植え替える頻度も減らすことができます。

はなこ
はなこ

スリット鉢は私が持っている形状以外にもポリポットのような小さいサイズに使われている角形や、深さのあるロングタイプのものがあります。サイズも豊富にありますので育てる植物に合わせてお使いください。

デメリット

メリットでもある排水性の良さですが、土の乾燥が早くなりますので水切れを起こさないように注意が必要です。しかし乾燥を好む植物には最適な鉢だといえます。

一般的によく使われているのはプラスチック製ということもあり、陶器製や素焼き鉢やテラコッタと比べて軽いため、風の強い時は倒れてしまうということもあるかもしれません。テラコッタ製のスリット鉢もありますが、価格が高いのが難点です。

そのほかのデメリットとしてはスリットから土が漏れてしまうことがありますが、対処法はこのあとの「スリット鉢の使い方」に書いています。あとはおしゃれな鉢と比べて、デザイン的にイマイチといったところでしょうか。

スリット鉢の使い方

スリット鉢は普通の鉢と少し植え方が異なります。また置く場所にも配慮が必要です。

鉢底石は不要

鉢に植物を植える時は鉢底石を敷いてその上から土を入れますが、スリット鉢には鉢底石は不要です。

鉢底石がスリット部分を塞いでしまい、一般的な植木鉢に植えた時と同じ様に根がサークリングしやすくなってしまいます。
そもそも鉢底石を使用する目的は水はけを良くするためです。スリット鉢は一般的な鉢より水はけが良いので必要ありません。

土の入れ方

スリット鉢は土を入れるとスリットの部分から土が漏れてしまう事があります。土の漏れを防ぐには、スリットにかかる部分だけ少し粗目の土を使うようにすれば良いと思います。

また土を入れる時に、まず土を水で濡らしてから入れるようにすればスリットから漏れる土の量を減らすことができます。

どうしても気になるようでしたら、鉢底ネットを使ってみるといいかもしれません。しかし本来は鉢底石と同様に鉢底ネットも必要ではありません。

はなこ
はなこ

スリット部分から土が漏れ出るのは最初の頃だけです。根が成長していくので漏れ続けることはありません。

置き場所

スリット鉢を土の上に直接置くと、酸素や光を取り込めず根の成長を止めることができなくなり、スリットから根が出てそのまま地面に根を下ろしてしまいます。

土の上に置く場合は、ブロックやレンガ、すのこなどを使い、直接鉢と土が触れないようにしてください。

そのほかの注意点

スリット鉢のデメリットのひとつともいえそうなデザイン性がないということから、少しでもおしゃれに見せようとしてスリット鉢の上から鉢カバーですっぽりと覆ってしまう人がいらっしゃるようです。

しかしスリット鉢の上から何かで覆うとスリット鉢の特性が生きてきません。鉢カバーを使うのであればスリットの部分だけでも覆わないようなものにしてください。

最初の写真のような一般的なスリット鉢のほか、スリットが目立たないものもあります。

根はり鉢

このスリット鉢も私が持っているもので、根はり鉢という名前で販売しています。ぱっと見た感じではスリットが目立ちませんが、こちらもスリット構造になっています。

このように外側から見るとスリットは分かりにくいですが…。

根はり鉢スリット部分

内側から見るとスリットがあるのがわかります。

根はり鉢内側

植え替えの時に根が回ってしまって困っている方、植え替えの頻度を減らしたいと思っている方、一度スリット鉢を試してみてはいかがでしょうか。

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