家から車で15分ほど走ると万博記念公園があります。万博記念公園は1970年3月15日から9月13日までの183日間開催された日本万国博覧会の跡地を整備した公園で、家から近いこともあって時々行って園内を散歩しながら季節ごとの花を楽しんでいます。
特に春には満開の桜、秋には紅葉ととても綺麗なのですが、紅葉の季節なのになぜか桜がちらほらと咲いているのを見かけます。
これは一般的に言われる季節外れの開花だとか、狂い咲きというものなのでしょうか?
桜について
桜はバラ科サクラ属の落葉広葉樹です。
基本の野生種は、ヤマザクラ(山桜)、オオヤマザクラ(大山桜)、カスミザクラ(霞桜)、オオシマザクラ(大島桜)、エドヒガン(江戸彼岸)、チョウジザクラ(丁字桜)、マメザクラ(豆桜)、タカネザクラ(高嶺桜)、ミヤマザクラ(深山桜)の9種に、沖縄で野生化したカンヒザクラ(寒緋桜)を合わせた10種で、その野生種の自然交雑で生まれたものだけでも100種以上あるようです。その100種以上の自然交配・交雑種プラス人工的に交配・交雑させた園芸種を合わせると600種以上あるといわれています。
例えば桜の開花宣言でお馴染みのソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラの交雑種です。エドヒガンは葉が出るより先に花が咲く特徴があり、オオシマザクラは花が白っぽく大きいという特徴があります。ソメイヨシノはそのどちらの特徴も持ち合わせた桜です。
ジュウガツザクラ(十月桜)について
秋に桜の話題というのも季節外れのようですが、四季桜や子福桜など秋に咲く桜もあり、今月は10月ということで十月桜について少し書いてみようと思います。
十月桜は名前の通り10月頃から開花する桜で、江戸時代後期から栽培されてきました。エドヒガンとマメザクラの交雑種で、花はソメイヨシノより小さく樹高もあまり高くありません。
10月頃に開花するではなく、10月頃から開花すると書きましたが、十月桜はソメイヨシノのように一斉に咲いてぱっと散る桜ではなく、10月頃から4月上旬、コスモスの頃からちょうどソメイヨシノが咲く頃までの期間、少しずつ断続的に開花していく桜です。
しかし冬は花数が少なくなるか咲かなくなり、春になりソメイヨシノが咲き始める頃と同じ時期になると見頃を迎えます。春は秋より花数が増えて咲きますので、秋と春に咲く二季咲きの桜という方がいいかもしれません。広義では冬桜のひとつになります。
十月桜の花弁は10~20枚程度の八重咲き、あるいは半八重咲きで小さく、白色の花を咲かせることが多いですが、ピンク色をした花もあります。花弁が捻じれている特徴がありますが、これは秋から冬にかけて咲く時に生じ、春に咲く時は秋冬に咲く花より大きく捻じれもありません。
この十月桜はクローン個体であるソメイヨシノと違って、同一個体からのクローンではありません。ですから色も花弁の枚数も異なった花を咲かせるのです。
なぜ秋に咲くのか?
なぜ秋や冬に桜が咲くのか?ですが、その前に春に咲く桜の開花について書いてみたいと思います。
桜は春に開花して花が散ったあと葉を出します。葉が茂っている夏になると、翌年に花を咲かせるための花芽(かが)を作ります。そうして秋になり落葉すると桜の花芽は休眠期に入って寒い冬を迎え、寒さにさらされることで休眠から目覚め、開花に向けて生長をはじめます。これを休眠打破といいます。
でも秋に開花するのであれば、休眠打破はどうなっているのか不思議ですよね。
一般的に桜の休眠は次の3つに分けられます。
- 前休眠期(葉が芽の生長を抑える時期。摘葉すれば芽が成長する:9月上旬~10月中旬)
- 真正休眠期(芽が成長しない自発的に休眠している時期:10月上旬~11月中旬)
- 後休眠期(環境が良ければ芽が成長する強制休眠の時期:10月下旬~1月上旬)
十月桜は休眠の浅い時期に休眠打破することができるため秋に開花し始め、真正休眠期になると中休みで開花しなくなり、そのあと春になり桜の時期になると休眠から覚醒し開花が始まるのではないかと考えられているようです。
また桜の原産地はネパール地方で、現地で咲くヒマラヤザクラは秋が開花時期です。しかしヒマラヤから日本へ渡ってきて分化していく過程で日本の気候に合うように秋咲きから春咲きへと変化したようです。十月桜を始めとする秋冬に開花する桜は、桜のルーツであるヒマラヤザクラの先祖返りだという説があります。
万博記念公園では日だまりの池、水すましの池北側、日本庭園のはす池のあたりにありますので、機会があればご覧になってください。
先日は須磨離宮公園に秋バラを見に行きましたが、その時にも十月桜が咲いていました。場所は植物園の中にあるみどり滝のあたりで、ジュウガツザクラと書いてありますのですぐにわかります。写真は須磨離宮公園で撮った十月桜です。紅葉も少しだけ始まったようです。
家の近くなど思わぬところで桜が咲いているのを見かけるかもしれませんので、十月桜かもと思って観賞してくださいね。