数多くある雑草の中の世界最強の雑草と地球上で最悪な侵略的な雑草

植物が成長する季節は育てている植物以外の植物も成長する季節です。目的を持って育てている植物以外の植物…それを一般的には雑草といいます。雑草なんていうと牧野富太郎博士に「雑草という草はない」とお叱りを受けそうですし、博士の仰るようにそれぞれにはちゃんと名前も付いているので、一括りに雑草なんて言うのは対象となる植物に対して失礼だとも思うのですが、気持ち的には育てている植物以外の植物はやはり雑草なんですよね…。

私はいろいろな植物を育てていることもあって、しょっちゅう雑草抜きをしているのですが、先日抜きながら「雑草界の最強と最悪はあれとあれだな」と思ったので書いてみることにしました。



最強のチガヤ

チガヤ(千萱、茅、白茅)は国際自然保護連合(IUCN)が2000年に発表した「世界侵略的外来種ワースト100」に選ばれており、「世界最強の雑草」と呼ばれています。

チガヤ

田畑や河川の土手などでよく見られる単子葉植物、イネ目イネ科チガヤ属の植物で、4月頃から芽を出して5〜6月にかけて開花します。開花すると白い穂を付け、花粉症の原因のひとつにもなります。

地下に匍匐茎があって地上茎を取り除いても地下茎で増え、開花のあとは種を飛ばして増えていきます。その上、地下茎は他植物を生えにくくする物質を出すといわれており、他植物を押しのけて広がっていきます。また地下茎は冬になっても枯れないため、一度生えると駆除しにくい雑草です。

匍匐茎(ほふくけい)とは地上近くを這うように伸びる茎のことです。

チガヤ属は世界に約10種あるといわれていますが、日本で見られるのは1種のみだそうです。

日本全土に見られますが、日本以外では森林を破壊し、チガヤのみになる「チガヤ草原」になってしまったという事例もあるようで、厄介な雑草といえるのではないでしょうか。

しかし日本では古くからいろいろなものに使用されており、生活と密着していたともいえます。

  • 茎や葉を乾燥させて屋根を葺く。(茅葺き屋根)
  • 現在、粽(ちまき)は笹の葉を使いますが、本来はチガヤの葉に包んでいた。
  • 神社などで見る「茅の輪」。
  • つばなと呼ばれる若い花穂を噛むとほんのり甘い。(万葉集に記されています。)
  • 日本の風土に合った生態系なので表層土の浸食防止にあえて植える。
はなこ
はなこ

古事記や万葉集にも出てくるチガヤは、枕草子にも「草は浅茅、茅花いとおかし」と書かれています。

増え方などを考えると邪魔な植物のようですが、有益なことも多くある「世界最強の雑草」なのかもしれません。



最悪のナガエツルノゲイトウ

最強という言葉は最も強いだけで悪いという意味はありませんが、ナガエツルノゲイトウ(長柄蔓野鶏頭)は最悪なので最も悪い植物ということになってしまいます。

ナガエツルノゲイトウはナデシコ目ヒユ科ツルノゲイトウ属に分類される多年草で、世界中に外来種として定着しており、「地球上で最悪の侵略的植物」と呼ばれています。 2005年に外来生物法の施行と同時に特定外来生物に指定されました。

ナガエツルノゲイトウ

「世界中に外来種として」とありますが、異世界から降ってきたというわけではなく、南アメリカが原産地だそうです。

鑑賞用の水草として「アルテルナンテラ」などの名前で輸入・流通していた同属種があり、ナガエツルノゲイトウはこれらに含まれていた可能性があるらしいのですが、はっきりとはわかっていません。水草の流通は1956年に禁止されましたが、警告が出されるほどの事態になっています。

日本では1989年に兵庫県尼崎市に最初に定着したといわれています。現在では多数の都府県で発生が見られていて、北限は茨城県、埼玉県ですが、寒さに強いこともあり、今後はもっと広範囲に発生するとみられています。

開花時期は4~10月ですが、条件によっては1年中花を咲かすこともできるようです。

増え方は種子ではなく地下茎や根で増えていきます。茎は千切れやすく、千切れた断面からでも再生し、根も2mmあれば増やすことができますので、素人が駆除しようとして下手に手を出し、抜く途中で千切れて余計に広げてしまったり、靴底にくっついて他の場所へ移動させてしまうということもあります。また水辺だけでなく陸地でも根を張るため、畔や畑や休耕地でも増えていきますし、耐寒性もあって冬でも地下部は枯れません。その上耐塩性もあるという、かなり厄介な植物です。

アメリカ合衆国では天敵のアザミウマを利用して防除しているようですが、日本では遮光シートを使って枯れさせるほか、重機などで物質的に除去する方法がとられています。



ナガエツルノゲイトウによる被害

一番最初に定着したとされる兵庫県によりますと次のことが書かれていました。

洪水被害

繁殖したナガエツルノゲイトウが大雨で大量に流れると水流の阻害や、排水口を塞ぎ、洪水の発生が懸念されます。

農業被害

田んぼに入り爆発的に繁殖するとイネを覆い収穫できなくなります。畑も同様に繁殖します。特に農耕機に付いて広がるおそれがあります。

生態系被害

ため池等の水面を覆いつくすため、水質が悪化します。また在来生物の生育環境と競合する等、悪影響を及ぼします。

はなこ
はなこ

農林水産省や環境省、各地の環境事務所や研究所、府や県や市のホームページなどでもナガエツルノゲイトウへの注意喚起や防除などについて記していますので一度お読みください。もし見つけたら自分で駆除しようとせずにお住まいの地域の環境課まで連絡しましょう。

最強の雑草と呼ばれている「チガヤ」は生活に密着した雑草でしたが、最悪の雑草「ナガエツルノゲイトウ」は利用するとか、益になるといったことは今のところ聞いたことがありません。このような特定外来生物が増えていかないことを祈っています。

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