50音順に紹介しているフラワーデザイン用語のカテゴリでも、それぞれの文字の個所に書いていますが、見やすいようにワイヤリングメソードのみを纏めてみました。
ワイヤリングメソードについて
ワイヤリングメソードというのは、花や葉に針金(ワイヤー)を挿したり巻き付けたりして、花材の形を整えたり固定しやすいように処理することで、フラワーデザインをする上で大切な基礎のひとつです。
ワイヤーには#30、#28、#26、#24、#22、#20、#18というように番号が付いており、数字が大きいほど細く、小さいほど太くなっています。どの花に何番のワイヤーを使うかは、花の種類や目的によって使い分けますが、一般的な目安として花材にワイヤーを掛けた後、花や葉の5cmから10cm程度下の部分を持ち、少し振ったくらいでは曲がらない太さのワイヤーを選ぶようにしてください。
それではフラワーデザインでよく使うワイヤリングメソードをひとつずつ紹介します。
ピアスメソード
子房、がく、茎に対してワイヤーを直角に挿し通し、茎に沿って折り曲げる方法です。
花に対してワイヤーが弱い場合は中央で二つ折りにし、強い場合は片方を長くするように折り曲げるようにします。それでも弱く感じる場合は、今使っているワイヤーより太いワイヤーを使います。
写真のようにワイヤーを真っ直ぐ挿し通ります。
次に茎に沿って下に折り曲げます。
ピアスメソードに適した花材
バラ、カーネーション、ユリ、ストック、キンギョソウなど。
クロスメソード
ピアスメソードは1本のワイヤーを使いましたが、クロスメソードは2本のワイヤーを使って十字になるように子房やガクに挿し通します。
ピアスメソードより安定しますので、大きめの花にはクロスメソードを使うとよいでしょう。
写真のように十字になるようにワイヤーを通します。
その後、ピアスメソードと同じように茎に沿って下に折り曲げます。
クロスメソードに適した花材
ピアスメソードと同じように、バラ、カーネーション、ユリ、ストック、キンギョソウなどに使います。
フックメソード
ワイヤーの先端を小さな鍵状に曲げて、花の中心に上部から挿し通し、ワイヤーが花の中に隠れて見えなくなるまで下に引くか、花の下部からワイヤーを上部に向けて挿し通し、花からワイヤーの先端が見えたら鍵状に曲げて下に引く方法をフックメソードといいます。
写真はスプレー菊にフックメソードを行ったものです。私は花の上部からワイヤーを挿し通しました。
その後、次の写真のようにワイヤーが見えなくなるまで引き降ろします。中心部分からはワイヤーが見えないのがお解りいただけると思います。
フックメソードに適した花材
小菊、ガーベラ、ダリア、マーガレット、アスター、デージーなど。
ツイスティングメソード
ワイヤーを通すことができない花や花びら、枝、リボンなどに使用し、基部にワイヤーを巻きつけて留める方法です。
写真はかすみ草にツイスティングメソードを行ったものです。
フェザーリングしたカーネーションも、ツイスティングメソードを使用しますが、きつく巻きつけてしまうと花弁がワイヤーで切れてしまいますので、緩まない程度に巻くようにしてください。
ツイスティングメソードに適した花材
かすみ草、アスパラガス、スターチスなど。
ヘアピンメソード
ヘアピンメソードは、葉や花弁に対して使用します。
方法は主葉脈に対して裏から直角にひと針縫い、葉の元に向かってワイヤーを折り曲げるか、最初にワイヤーをヘアピン状(U字状)に曲げておいてから、ひと針縫います。
茎に向かって降ろす際に縫った穴を広げてしまうこともありますので、縫ってある場所を指で押さえながら降ろすと穴が広がりにくくなります。
写真はヘデラにヘアピンメソードを行ったものです。葉の表にワイヤーが目立たないよう小さく縫うことが綺麗に仕上がるコツです。
ヘアピンメソードに適した花材
葉:アイビー、ツバキなど主葉脈のはっきりとしたもの。
花:バラ、ユリ、チューリップなどの花弁。
ソーイングメソード
細長い葉や主葉脈がはっきりしない葉に対して行う方法で、ワイヤーで葉の元の方から、葉先に向かって2針以上縫って留めます。
また花弁にも使用しますが、花弁の場合は一箇所を切り開き、ワイヤーで横向けに縫っていきます。その際ワイヤーをカーブさせながら縫い、最後は子房の部分で数回ツイスティングをして留めます。
ソーイングメソードに適した花材
葉:カーネーション、グラジオラスなどの葉。
花:トルコギキョウ、リンドウ、ユリなどの花弁。
インソーションメソード
ガーベラやスイートピーなど、茎が中空になっている花やカラーなどのように柔らかい茎を持っている花に対して行う方法で、ワイヤーを切り口から花冠に近い部分まで挿し込んで留めたり形を作ります。
曲がりやすい茎を真っ直ぐにできますし、曲がった茎を真っ直ぐにもできます。
写真のスイートピーは、上がなにもしていないもので、下がインソーションメソードを行ったものです。なにもしていない茎に対して、インソーションメソードを行った茎は簡単に曲げることができます。
インソーションメソードに適した花材
ガーベラ、スイートピー、カラーなど。
ルーピングメソード
ラン類や筒状になった花に使うワイヤリングメソードで、ワイヤーをU字状、または花の大きさに合った輪状にして、花の上部から挿し込み花を留める方法です。
写真はデンファレにルーピングメソードを施したものです。こちらはU字状にワイヤーを曲げてから挿し込んでいます。写真ではわかりやすいように裸ワイヤーを使っていますが、ブーケやコサージで使用する場合は、見える部分だけでも白いフローラルテープを巻くと綺麗に仕上がります。
花の上部から挿し込んで裏側にワイヤーが出たら、フローラルテープで処理します。
ルーピングメソードに適した花材
ラン類、ヒヤシンス、フリージア、ジャスミンなど。
セキュアリングメソード
茎が弱く曲がってしまう場合や、茎を曲げて形を作るときに補強する目的で使うワイヤリングテクニックです。
写真のようにカーネーションのような子房がある花は、ワイヤーの先端を子房に少し挿し込んでから茎に巻きつけていきます。スズランのような子房がない花は、ワイヤーの先端を鍵状にして、花穂の先の部分に引っ掛けて固定し下方に向かって巻きつけていきます。
ワイヤーにはフローラルテープを巻きますが、子房に挿し込む花の場合は、挿し込む部分1cmから2cm程度はフローラルテープを巻かないほうが挿し込みやすいと思います。ただしフラワー装飾技能士の検定試験では、フローラルテープの巻いていない裸ワイヤーの部分が少しでも見えていると減点対象になりますので、見えなくなる場所まで挿し込むようにしてください。
ワイヤーの太さや巻き付ける間隔は、その花の茎の撓り具合や曲げたときにきちんと固定されるかどうかで決めてください。
セキュアリングメソードを行う主な花
カーネーション、ストック、キンギョソウ、グラジオラス、サンダーソニア、スズランなど。
エクステンションメソード
ワイヤーが短い場合や花に対して弱い場合に、ワイヤーを更に補充することをエクステンションメソードといいます。
写真はワイヤーが短い場合の補充方法です。1本目のワイヤーにフローラルテープを巻き、巻き終わる少し手前で、2本目のワイヤーを添えてそのまま最後までフローラルテープを巻きます。
エクステンディングともいいます。
以上がフラワーデザインで使うことの多いワイヤリングメソードです。アレンジメントだけでなくブーケやコサージを作る時にも必要ですので、是非覚えてくださいね。