「水やり三年」という言葉があります。
植物に水を与えることは簡単なように見えますが、その植物にとって良いタイミングで水やりができるようになるまで3年はかかると園芸の世界ではいわれています。
水やりはなぜ必要か?
植物の細胞の中には原形質という水分をたくさん含んだものが詰まっています。植物が成長していくためにはこの細胞内に多くの水分が必要です。
また光合成をするためには二酸化炭素のほかに水分が必要ですし、与えた肥料を吸い上げるためにも水分が必要になります。そのほかにも土の中の二酸化炭素や根から出た老廃物を排出させ、新しい酸素を取り入れるためにも水やりをしなければいけません。
このように植物にとって水分はなくてはならないものです。
地植えの場合は植え付けをしたあとの根付くまでの期間と、夏や日照りが続くときには水やりをしなくてはいけませんが、それ以外の時は基本的に降雨だけで育ってくれます。しかし鉢植えやプランターで育てる場合は、鉢(プランター)の中だけの水分で育っていきますので、育てている間はずっと水やりをしなくてはいけません。
植物に水をあげるだけだから簡単と思ってしまいがちですが、上手く育つのも枯らしてしまうのも水やりひとつかもしれません。
ではどのような水やりがいけないのでしょうか。
避けないといけない水やり
頻繁にたっぷりと水を与える
真夏などで毎日土が乾いてしまう季節以外、土が乾く暇がないほど毎日のように水を与え続けると、ずっと土が湿った状態になります。土が湿ったままの状態が続くと根の伸長が抑えられてしまい、植物そのものが生育していきません。
そして土がいつも水をたっぷりと含んでいるため、根が新鮮な酸素を取り入れることができなくなって根が腐ります。この状態が根腐れです。
植物にとって一番大事なところは花でも葉でもなく根です。根が腐ってしまうと植物そのものが枯れてしまうことに繋がります。
植物を枯らしてしまう原因で一番多いのが水のやりすぎによる根腐れともいわれています。
毎日少しずつ水を与える
毎日たっぷりの水を与えてはいけないのなら、毎日コップ一杯程度の水を与えるといいのか?というと、これも駄目です。
少量の水を毎日与え続けると、水が染みた土と全く水の染みていない土に分かれます。それを繰り返すと、土の中で水の通る道のようなものができてしまい、道になっているところはずっと湿ったままで、それ以外は水が来ないままになります。
鉢皿に水を溜める
鉢皿に水を溜めるパターンとしては次のような3通りがあると思います。
土の上から水やりをして鉢底から出てきた水を溜めたままにする
水やりをして土の中を通り、鉢底から出てきた水を鉢皿に溜めたままにしていた場合、水やりをすることで折角出てきた土の中の二酸化炭素や老廃物を再び吸わせることになってしまいます。
土の上から水やりをして鉢底から出た水を捨てて、新しい水を鉢皿に入れる
土の中の二酸化炭素や老廃物が出た水を捨てることはいいのですが、鉢皿に水を入れておくと鉢底がいつも湿った状態になりますので根腐れを起こしやすくなります。
水やりの方法は鉢皿に入れた水を吸わせるだけ
土の上から水を与えるのではなく、水やりは鉢皿に入れた水を鉢底から吸わせていたら、土の中の二酸化炭素や老廃物を鉢底から出してあげることができません。
水やりのコツ
水やりは何日に一度のように私たちが頻度を決めてはいけません。
土の表面が乾いたら与えるというのが基本ですが、鉢の深さや大きさ、季節や気温によっては土の表面が乾いていても、鉢底の土はまだ湿ったままの場合がありますので、植物の様子や季節、植物の成長期や休眠期などを考慮して水を与えるようにしなければいけないのですが、これが難しいのです。この難しさが「水やり三年」という言葉に繋がるのではないかと思います。
ではなぜ土が乾いてから水を与えないといけないのでしょう。
水やりの時間
水やりに適した時間帯は午前中です。
夕方の水やりですが、真夏で夕方になって土が乾いているようなら16時以降に再度水やりをしてもかまいません。昼過ぎに土が乾いているなと思っても、太陽が高い時間帯は水を与えると鉢の中で水がお湯になるので避けてください。そして移動できる鉢であれば日光が当たらない場所に移動させて夕方まで待って水を与えましょう。
水やりの頻度
一般的に新しい葉が出てくる時や花が咲いていくときは成長期ですので多くの水が必要になります。逆に休眠期にはあまり水を吸いませんので与え過ぎると根腐れを起こします。
梅雨になると湿度も高くダメージを受けやすいので、よく土を観察するようにしてください。あまりにも土が乾かないようでしたら置き場所を変えて様子をみましょう。
すぐに土が乾くとき
根の状態を見て、必要なら大きな鉢に植え替えをしてください。
土が乾きすぎるようなら植え替えをしたほうがいい時もあります。
鉢の中の土の状態を調べる
夏などは鉢底に水が残っている状態で次の水やりをしても大丈夫なのですが、寒い季節になると表面の土は乾いていても鉢の中にはまだ水分が残っていることがあります。しかしこれは土の表面からではわかりません。
鉢の中に水分が残っているかどうかを調べる簡単な方法として次のようなものがありますのでお試しください。
葉水について
水やりをする時は花や葉には水をかけずに株元に水を与えるようにしましょう、というのを見聞きすると思いますが、実際はそこまで気を付けなくても大丈夫です。しかし大丈夫といわれたからといってじゃぶじゃぶと花に水をかけるのはやめた方がいいです。多少水がかかっても大丈夫というイメージでお願いします。
葉に水をかけることはハダニの発生を防ぐためにも有用ですので、葉水は適宜与えてください。ただし夕方に葉水をすると、一晩ずっと葉が濡れたままになりやすく、病害虫の繁殖を促すことになるかもしれません。葉水は朝にしましょう。
水やりのポイント
最後に水やりのポイントを箇条書きにしてみました。
- 土の状態を見て水やりをしましょう。
- 与える時は鉢底から水が流れ出るまでしっかりと与えます。
- 花が咲く植物は花にあまり水を掛けないようにしましょう。
- 葉に水をかけるのは朝だけにしてください。
- 水をやってもすぐに土が乾くようなら植え替えを考えましょう。
簡単そうに見えますが、なかなかに難しい植物の水やり。私も何度も失敗してカラカラにしたり根腐れを起こしたりしてきました。それでも植物を育てていると、水やりのタイミングがなんとなくわかってくると思いますので、楽しみながら植物を育ててください。