日本には昔から伝わる風習がいろいろとあります。七草粥をいただく1月7日もそのひとつで、人日の節句といって五節句のひとつです。
節句について
五節句の「節」というものは元々は中国の暦法で定められた季節の変わり目のことで、1年間には5回あります。
五節句は次の5つ
人日(じんじつ)の節句 | 1月7日 | 七草を食べることから七草の節句ともいいます。 |
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上巳(じょうし)の節句 | 3月3日 | 桃の節句のことで、お雛祭りです。 |
端午(たんご)の節句 | 5月5日 | こどもの日で男の子の節句です。 |
七夕(しちせき)の節句 | 7月7日 | 七夕のことで、短冊に願い事を書いて笹に飾ります。 |
重陽(ちょうよう)の節句 | 9月9日 | 菊の節句とも呼び、菊を鑑賞したりします。 |
1月7日は人日の節句といいます。
七草粥のはじまり
中国では元日から六日までそれぞれの日に動物をあてはめて占いを行う風習がありました。
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- 元日には鶏
- 二日には犬
- 三日には羊
- 四日には猪
- 五日には牛
- 六日には馬
それぞれの日はその日の動物を大切にしていました。そして7日は「人」を占う日にあてて「人を大切にする日=人の日=人日」という節句にしました。人日の節句には7種類の草や野菜を混ぜた汁物を食べて一年間の無病息災を祈っていたようです。その風習が日本に伝わり日本の食文化に合うように七草粥が始まったといわれています。
春の七草について
セリ(芹)
セリはセリ科セリ属の多年草で三つ葉に似た形状をしている植物です。三つ葉はセリ科ミツバ属に分類されていますので同じ仲間ともいえます。
セリは7月~8月頃に切り花のホワイトレースフラワーに似た小さな白い花を咲かせます。因みにホワイトレースフラワーもセリ科です。
ナズナ(薺)
ナズナはアブラナ科ナズナ属の越年草で、別名のペンペングサという呼び名の方が知られているかもしれません。
摘み取ったナズナを振るとペンペンと音が鳴るからペンペングサという名前になったのではなく、花が咲いたあとに出来る種子が三味線のバチに似ていることから付けられたものです。種子が乾燥してから摘み取って振ると中の種子が「ペンペン」ではなく「カラカラ」という音を立てます。
ゴギョウ(御形)
ゴギョウはハハコグサとも呼び、黄色い花を咲かせるキク科ハハコグサ属の越年草です。漢字で「御形」と書き、花が美しいことから名前がついたとされています。
別名のハハコグサ(母子草)の由来は、白い毛が植物を覆う様子が母親が我が子を包み込む様子に見えたことから付けられました。
ハコベラ(繁縷)
ハコベとも呼び、ナデシコ科ハコベ属の白い花を咲かせる越年性一年草です。世界中には約120種のハコベ属の植物がありますが、日本でハコベと呼ばれるのは、コハコベ、ミドリハコベ、ウシハコベの3種です。
繁縷は「繁栄がはびこる」として縁起のよい植物とされています。
ホトケノザ(仏の座)
春の七草におけるホトケノザは「コオニタビラコ(小鬼田平子)」という植物のことで、キク科ヤブタビラコ属の越年草です。
コオニタビラコのほかにもホトケノザと呼ばれるサンガイグサという植物があります。サンガイグサはシソ科オドリコソウ属の一年草あるいは越年草です。
コオニタビラコは七草粥にもするように美味しく食べられる食材ですが、サンガイグサは食用としてはお勧めできません。毒性を持っているわけではないのですが、香りも悪く美味しくないようです。
別の植物なのになぜどちらも「ホトケノザ」と呼ばれるようになったのか?
コオニタビラコもサンガイグサも葉の形が仏様の台座に似ていることから「ホトケノザ(仏の座)」と呼ばれるようになったといわれています。
スズナ(菘)
スズナはアブラナ科アブラナ属の越年草でカブ(蕪)のことです。
世界中で栽培されているカブですが、分類するとアフガニスタン原産のアジア系と、中近東から地中海沿岸原産のヨーロッパ系との2変種に分かれます。
ヨーロッパ系は寒さに強いため東日本で、アジア系は西日本で多く栽培され、ヨーロッパ系とアジア系を分ける線は関ヶ原付近に引くことができ、この線のことを「かぶらライン」と呼んでいます。
スズシロ(蘿蔔)
スズシロはアブラナ科ダイコン属の越年草で大根のことです。
1年中見かける大根ですが、旬である冬はみずみずしく甘みが増すため煮物やサラダにと大活躍の野菜です。逆に夏は辛みを感じるようになります。これはアブラナ科の野菜に含まれる辛み成分のイソチオシアネートが夏になると多くなり、冬になると少なくなるためです。
無病息災を願い、お正月の食べすぎや飲みすぎで弱った胃腸を休めるためにお腹にも優しい七草粥を食べて新しい年を元気で過ごしましょう。