春はチューリップや菜の花などたくさんの花が咲き始める季節です。その中でも代表選手ともいえるのは桜ではないでしょうか。
桜はバラ科サクラ属の落葉高木または低木で、野生種はヤマザクラ(山桜)、オオヤマザクラ(大山桜)、カスミザクラ(霞桜)、オオシマザクラ(大島桜)、エドヒガン(江戸彼岸)、チョウジザクラ(丁字桜)、マメザクラ(豆桜)、タカネザクラ(高嶺桜)、ミヤマザクラ(深山桜)の9種に、沖縄で野生化したカンヒザクラ(寒緋桜)を合わせた10種が基本です。
品種も多く、基本の10種の自然交配や交雑で生まれたものは100種以上あり、自然交配交雑を元にして人工的に作られた園芸種を合わせると、現在では600種以上あるといわれています。
桜の花色は河津桜のような濃い色、ソメイヨシノのような薄い色と、色の濃淡はあってもピンク色が殆どですが、黄色や緑色の花を咲かせる品種もあります。
黄色い桜、ウコンザクラ(鬱金桜)
黄色い花を咲かせる桜はウコンザクラ(鬱金桜)で、オオシマザクラ系のサトザクラです。
山に自生している野生種をヤマザクラ(山桜)といい、ヤマザクラに対して里で人が育てた園芸種をサトザクラ(里桜)と呼びます。
花は八重咲きで、ソメイヨシノが咲き終わったあとに咲きはじめる遅咲きの桜で、別名で「黄桜」とも呼ばれており、清酒の「黄桜」はウコンザクラにちなんでつけられました。
ウコンザクラは江戸時代に作られた品種と考えられています。花弁が香辛料でお馴染みのウコン(鬱金)に似た色ということから名前がつけられました。
ウコンザクラが咲き進むと…
最初は淡い黄色をした花色ですが、咲き進むにつれ中心部から赤みが増してきます。
緑色の桜、ギョイコウザクラ(御衣黄桜)
ギョイコウザクラの花色は緑色で、ウコンザクラとともに特異な花色の桜として知られています。
名前の由来は貴族が着ていた服の色「萌黄色」に近いことから「御衣黄」とつけられたそうです。別名で「黄桜」のほか「緑桜」とも呼ばれています。
ギョイコウザクラは江戸時代に京都の仁和寺で栽培されたのが始まりだといわれており、今では沖縄県以外の全国各地で見ることができるようになりました。開花期はウコンザクラと同じようにソメイヨシノが咲き終わってからです。
あるひとつの植物で、花や果実に「変わり種」ができることがあります。これは枝が成長するいずれかの段階で突然変異が生じ、遺伝子が変化してしまったためで、これを枝変わりといいます。
ギョイコウザクラが咲き進むと…
ギョイコウザクラもウコンザクラと同じように、中心部から紅色に染まっていきます。
なぜ花色が変わるのか
例えば桜の開花宣言でお馴染みのソメイヨシノは、咲きはじめの花色は白っぽいピンク色ですが、散り際になると中心部分が濃いピンク色になり、花弁全体も咲きはじめより少しだけ濃くなってきます。
このような現象が起こるのは、桜の花は蕾の時には沢山あったアントシアニンが開花すると減少しはじめ、全開したときに一番少なくなってしまい、散り際になるとまた徐々にアントシアニンの量が増え始めていくため、最初の頃よりピンク色が目立ってくるからです。