「根に持つ」の語源は植物から?足元で繰り広げられる地下の裏取引

根に持つという言葉があります。意味は過去の出来事をずっと恨みに思っていて、いつまでも忘れないこと。

語源は植物の根は土の中にあって外からは見えないという事からなんだそうですが、じゃあガジュマルやモンステラなどの根が地上に出ている、いわゆる気根を持つ植物はどうなんだ?とか思ってしまいますが、まあ、それはそれと置いておきましょう。

ところで根から「なにか恨みがあるような物質を出す」植物があるのか気になりませんか?植物の根は本当に「怨念物質」を出しているのか否か。実はあるんです…怨念物質が。



怨念その1:アレロパシー

アレロパシーというのは植物が化学物質を周囲に放出し、それによって他の植物や微生物などの生育や発芽を促進したり抑制したりする現象です。

植物の中には、根や葉、落ち葉などからさまざまな化学物質を周囲に放出するものがあります。そしてその物質が近くにいる別の植物の発芽を抑えたり、根の成長を邪魔したり、生育を悪くしたりケースがみられます。

つまり、

私のそばで勝手に育つんじゃないわよ

このように植物が化学物質を使って周囲の植物にプレッシャーをかけている状態、これがアレロパシーです。

しかもこのような物質は根から土の中へ放出されることがあります。地上では静かに葉を広げながら、地下では根から化学物質を送り出しています。

アレロパシー代表:セイタカアワダチソウ

セイタカアワダチソウ

自分の周りに生えている他の植物の発芽や成長を邪魔し、一面を黄色に染め上げるほど勢力を拡大していくセイタカアワダチソウ。根からはシス・デヒドロマトリカリアエステル等の物質を放出します。

まさに根から怨念を送り出すアレロパシーの代表格です。例えばこんな感じでしょうか。

  • セイタカアワダチソウ「あれ?あなた新顔ですね。」
  • とある植物「はい、今日からここでお世話になります。」
  • セイタカアワダチソウ「仲良くしましょう。しかし私の近くでは暮らさない方がいいと思うのですが…。」
  • とある植物「え?なぜですか?。」
  • セイタカアワダチソウ「実は私の根からは、いろいろな物質が出ているのです。なにが出ているかは企業秘密ですけどね。(不敵な笑み)」

という会話がセイタカアワダチソウと、とある植物の間であるとは思えませんが、こんなイメージがアレロパシーです。

ところが、この強力な攻撃には思ってもいないオチがあります。

強力な物質を出し続けた結果、土の中に物質が溜まりすぎて、最終的に自分自身の根を傷めてしまい自滅してしまうのです。このように相手を倒すことに夢中になりすぎた結果、自分まで倒れてしまうという少々可哀想な一面もあります。

アレロパシーを持つ植物はセイタカアワダチソウだけではありません。ヒノキやヨモギ、松などもアレロパシー物質を持っています。

しかし、アレロパシーには良い面もあって、生育を促進することもあります。また土壌中の微生物などにも影響を与え、自分たちが暮らしやすい環境を整えているのです。



怨念その2:地下ネットワーク

「根に持つ」植物の話は、もう一段深いところへ行ってみましょう。

植物の根は、土の中で孤独に伸びているわけではありません。その根の周りには、土の中を細かく伸びて行く菌根菌(きんこんきん)というキノコやカビの仲間の菌がいて、植物の根と共生していることがあります。

この菌根菌は、ときには別の植物の根と繋がるようなSNSを作ることがあります。これを菌糸ネットワークといい、菌糸ネットワークを通じて、植物から植物へ栄養分などが移動するということが知られています。

これなら良い話なのでは?と思ってしまいますが、ここで怨念の出番です。

植物から植物へ移動するものの中には、相手の生育を邪魔するような化学物質が菌糸ネットワークを通じて移動する可能性も研究されています。さらに植物が菌根菌を介して、ストレスや害虫の被害を「記憶」し、病原体への防御に関係するシグナルなどを伝えることもあるといわれています。

昔のことは忘れてないわよ

という感じなのでしょうか。

菌根菌代表:アカマツ

アカマツ

この地下SNSの代表格とも言えるのが、日本の山でおなじみのアカマツです。 アカマツは地下でマツタケなどの菌根菌と手を取り合い、ネットワークを構築しています。

仕組みとしては、マツタケは土の中でアカマツの根に菌糸をまとわせます。すると根と菌糸の間で物質のやり取りが起こります。

  • アカマツ「光合成でできた炭水化物を持っています。」
  • マツタケ「そうしたら私は土の中から養分を探してきます。」

このようにアカマツとマツタケは物々交換を行っているのです。

普段の植物と菌は互いに栄養を分け合って持ちつ持たれつの関係なので平和なのですが、ストレスや害虫の被害にさらされたとき、上にも書いたように、ネットワークを通じて情報を伝達し、さらには相手の成長や生理状態に影響を与える可能性もあると指摘されています。

会話にするとこんな感じでしょうか。

仲良くしているアカマツとマツタケのところによそ者の植物がやってきました。

  • よそ者の植物「ここに住んでもいいですか?」
  • マツタケ「アカマツさん、よそ者さんが来ましたよ。どうしましょうか。」
  • アカマツ「よそ者さんは、まだ何もしてませんからねぇ…。」
  • マツタケ「そうしたらしばらくは様子見で行きますか。」

しかし、そのよそ者植物がマメ科の植物だった場合

  • マメ科植物「根粒菌と組んで土に窒素を供給しておきますね。」
  • マツタケ「ちょっとアカマツさん、大変です!。マメ科植物さんのせいで土の栄養が豊かになってしまいました。私は貧栄養な土じゃないと困るのですが…。」
  • アカマツ「私も土が豊かになると他の派手な木(広葉樹)に日陰にされて困るのですけど…。」

あるいは、よそ者植物が大型の木だった場合

  • アカマツ「来た頃は小さな木だったのに、あれよあれよという間にどうしてそんなに大きく育ってしまったのですか?!」
  • 大型の木「育ちやすい環境だったから大きくなることができました。」
  • アカマツ「こんなに大きくなると、私に光が当たらなくなって光合成が減ってしまうので困ります。」
  • マツタケ「光合成が減るのですか!?そうしたら糖分の仕送りが減るってことじゃないですか!それは困ります、様子見なんて言わずに今すぐなんとかしないと!。」

アレロパシーのときと同様にアカマツとマツタケの間でこのような会話があるとは思えませんが、こんな感じではないでしょうか。そして、もしなんらかの理由でアカマツとマツタケの共生関係が弱まったり他の植物が増えてきたら、森の生態系が変わるということに繋がるのかもしれません。



アレロパシーと菌根菌を会話で纏めると

  • 地上では「こんにちは、今日もいいお天気ですこと」と笑顔でお上品に挨拶し、
  • 地下では「お前、ワシのシマで何するん?」と牽制する。
  • さらに地下深くでは「その話、もうこっちには回ってきていますけど?」とネットワークのデータを見せる。

このようなイメージでしょうか。

植物は動けないから何もできないと思っていたら、

  • 根から化学物質を出す。
  • 微生物と複雑な関係をつくる。
  • 共生する。
  • 地下にネットワークを広げる。
  • 周囲の植物や環境に影響を与える。
  • 昔のことを記憶する。

など、いろいろとやっているようです。

  • 植物A「あの人、また来ましたよ。」
  • 植物B「先日、あの人に踏まれたのですよ。」
  • 植物C「25年前、あの人の親にも踏まれたのですよ。痛かったことをまだ覚えています。」
  • 植物D「こんにちは、はじめまして♪」
  • 植物A「Dさんですか?。(小声で)駆逐されるのも知らずにきたんですね。フッフッフ…。」

とか言っているのが人間の耳に聞こえてくるようだったら、私は怖くて公園や道を歩けません。

綺麗な花を咲かせたり、実をつけたりと表情はにこやかなのに、根では結構なことをしている植物たち。植物の世界もある意味で物騒なものなのかもしれないです。

やはり「根に持つ」の語源は植物からきているものなんですね。