いちご、いちじく、パイナップル|私たちが食べているのはどの部分?

以前にバナナ、りんご、みかんは植物的にはどこを食べているのでしょう、という記事を書きました。

バナナ、りんご、みかん|私たちが食べているのは果実のどの部分?
日本における果実の消費量は1位はバナナ、2位がりんご、3位はみかんです。このバナナ、りんご、みかんは「果実という部分」を食べていると思っていますが、植物的にはどこを食べているのでしょうか。果物・果実ではなく植物として考えてみると面白いですね。

今回はその第2段、いちご、いちじく、パイナップルは植物学的にはどこを食べている?という内容です。

楽しんでお読みください。ではまずいちごからです。

いちご

いちごは野菜か果物か?なんていう話を聞きます。個人的には「スイーツにも使われるし、絶対に果物」と言いたいところなんですが、農林水産省の分類では「野菜」なのです。

以前の記事でも説明した通り、毎年苗を植えつけて収穫し、食用に利用する草本植物を野菜、2年以上栽培する草本あるいは木本植物で果実を食用にするものを果樹としています。ただ定義しているものの、実際には野菜と果樹の区別は曖昧な状態で、その曖昧さの中で細分化したひとつに「果実的野菜」というものがあります。これは野菜の中で果物として利用するものを果実的野菜と定義しています。

いちごは毎年苗を植えつけて収穫する草本植物で、果実のように食べるので果実的野菜にあたります。



いちごのどこを食べている?

ところで、私たちが食べているいちごの甘くて赤い部分、植物学的な意味ではどこなのでしょうか。実はあの部分は厳密な意味での「果実」ではありません。

あれは、花のがくや花びら、めしべやおしべがついていた土台、つまり「花托(かたく)」という茎の先端が巨大化したものです。このように子房以外の部分が育ったものを「偽果(ぎか)」と呼び、リンゴやナシもこの仲間になります。

真果と偽果の違い

真果 受精後に種子の形成と合わせて子房のみが成熟・肥大し、その中に種子が含まれている果実
偽果 花托、がく、総苞など、子房以外の部分が生長・肥大して果実の主要部分になったもの

では、いちごにとっての本物の果実(真果)はどこにあるのでしょうか?

いちご

いちごを植物学的に見た果実部分は、表面にびっしりついている小さなツブツブひとつひとつです。これを「痩果(そうか)」といい、子房が成熟した本当の果実、つまり「真果(しんか)」にあたります。痩果の中には種子が1つ入っています。私たちが種のようだと思っていたツブツブは、種を包んだ果実だったのです。

私たちが食べているのは、巨大化した花托と100~300粒ほどの果実です。

いちじく

先ほどのいちごは「果実的野菜」という位置づけでした。

それに対して2年以上栽培する草本あるいは木本植物で果実を食用にするものは「果樹」と呼ばれます。いちじくは毎年同じ木から収穫できるので果樹、果物の仲間にあたります。

いちじくのどこを食べている?

いちじくの実のように見える部分は「花嚢(かのう)」と呼ばれます。これはクワ科イチジク属に見られる特殊な構造で、花を乗せる土台(花序軸:かじょじく)が肉厚な袋状に変化し、その内側に無数の小さな花を閉じ込めたものです。

いちじくは、このように花は咲いているのに外側から見えないことから「無花果」の漢字が当てられたと言われています。

いちじく

いちじくを割ると、中に赤っぽい小さなツブツブがたくさん詰まっています。これは、袋の中で咲いた小さな花ひとつひとつが、熟して小さな果実(痩果・真果)になったものです。受粉すると中に種子ができますが、日本で多く栽培されている品種は、受粉しなくても実ります。

また果実(痩果・真果)のまわりの白っぽい部分は、袋の壁にあたる部分で、花序軸が膨らんだものです。

私たちが食べているのは「袋の中で咲いた大量の花が咲いたあとにできた果実」と「それを丸ごと包み込んだ袋(花序軸)」です。



パイナップル

パイナップルはどこを食べているかの前に、少しだけ私の話を…。

3年ほど前にスーパーでパイナップルを買いました。そして食べたあと、頭についている葉の部分(クラウン)を土に植えて育て始めたところ、現在ではまだ実が付く様子はありませんが、葉先から葉先までの幅が80cmほどになりました。

最初に書いた定義をもう一度確認すると、毎年苗を植えつけて収穫する草本植物は野菜、2年以上栽培する草本植物や木本植物で果実を食用にするものは果樹です。このことからパイナップルは果樹、果物になります。

パイナップルのどこを食べている?

パイナップルは葉の中心から花茎が伸び、その先に100〜200個ほどの小さな花を咲かせます。

花が終わると、それぞれの花の根もとの子房が膨らんで小さな果実になります。この小さな果実が互いに隙間なくくっつき、1つの大きな「パイナップル」という形に合体するのです。このように、たくさんの花が集まってできた1つの果実を「複合果(ふくごうか)」と呼びます。

パイナップルの外側を見ると、うろこ状のものがたくさんついています。これは1輪の花が咲いて実になった名残です。

では、私たちが食べている黄色い部分は植物学的に見ればどこなのでしょうか?

パイナップル

あの果肉は、100個以上の小さな果実たちが癒着して膨らんだものです。そして、真ん中にある少し硬い「芯」の部分が、すべての花を支えていた花序軸(かじょじく)にあたります。

私たちが食べているのは、「花が咲いたあとに実った無数の小さな果実がくっついたもの」なのです。

そしてあの硬くて捨てることも多い芯が、すべての花を支えていた「軸(花序軸)」だったなんて驚きですよね。

今回は、いちご、いちじく、パイナップルの3種類について書いてみました。また機会があれば別の果物についても書こうと思っています。